校長室便り

平成30年度 校長室便り

幼稚部の園庭にて
幼稚部の園庭にて

柘植雅義

 

筑波大学附属大塚特別支援学校校長

 

筑波大学教授(人間系 障害科学域)

校長室便り8

「人が少しずつ育っていく姿」

(2018年9月3日 2学期が始まって)

 

 世の中には、美しいものがたくさんあります。でも、その中で一番美しいものは何か? と問われれば、「人が少しずつ育っていく姿」と答えたいです。遠い昔、障害のある子どもの研究や教育に携わるようになってから、ずっと、そう思っています。

 

 先日、2学期の始業式の日、いつものように朝、登校の様子を正門のところで見ていると、「あれ!この子、身長伸びたな。」、「あれ!この子、自分から挨拶ができるようになったな。」、「あれ!この子、自分の荷物(かばん等)を全部自分で持てるようになったな。」・・・

 

 保護者の方が、声をかけてくれます。「今年の夏休みは、毎日たくさん食べるようになって、病気をしなかったとのこと。」、「今年の夏休みは、プールに何度も出かけて、プールが好きになったとのこと。」、「今年の夏休みは、きょうだいと二人で遊んでくれるようになったとのこと。」、「(夏休みが終わって)久しぶりに、附属大塚に行くということが楽しみで、前の日からそわそわしていたとのこと。」・・・

 

本校のこどもたちへ

 さあ、2学期が始まりましたね。附属大塚は、2学期も、楽しいですよ。夏休みの間に、皆さんは、また少し、りっぱになって、カッコよくなっていましたよ。それから、皆さんの先生方も、夏休みの間、附属大塚や、大学や、他の町や、他の国で、たくさん勉強していましたよ。2学期も、いろいろなことをたくさん教えてもらってくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り7

PTA主催研修会

 

 「人は、丁寧な言葉を話すと、周りの人から大切に思われ、人が近づいて来てくれる。だから、(知的障害のある)子どもが幼少の頃から、家庭の中での話し言葉も特に配慮してきました。小さな頃、子どもに読み聞かせた絵本も、特に、言葉遣いに配慮したものを選んでいました。」と話した親。

 子どもの頃から、鉄道マニアだった子が、大人になって就いた職業は、鉄道関係ではなかった。けれど、やがて、自分で稼いだお金で、電車を乗り継いで埼玉県の熊谷へ、名鉄に乗るために名古屋へ、長野電鉄に乗るために長野へ、と出かけるという話も。時に、親や親せきを誘って(貯金で招待して)出かけるのだという。

 また、別の親は、我が子が歌舞伎・日本舞踊に興味をもち、長年お稽古に通い続け、先日、大きなステージで何十人もの大勢の仲間と一緒に踊る様子を映像で流しながら、お話しされました。知的障害のある子が、生涯に渡って興味を持ち続け取り組むことを見つけることが、いかに大事か、改めて知らされました。そして、そのような”お気に入り”を見つけることができた子どもの親の喜びも。

 

 先日、PTA主催研修会が開催されました。テーマは「卒業後の進路、生活について」。本校を卒業して20代前半になった子の親、4名が順に、我が子の幼少の頃から現在に至るまでのこと、そして、今、就労移行支援、作業所、会社などで、どのように過ごしているのか、どのような余暇を楽しみ、幸せに生活しているのか、がリレー形式で話されていくというプログラム。

 いつもは職員会議をする会議室が、本校の保護者の方々で超満員。熱心にメモを取りながら聞いている小さな子どもの保護者の方、何度も何度も頷きながら聞いている高等部の保護者の方、ふとハンカチで涙を押さえているように見えた方も。

 

本校の子どもたちへ

 もうすぐ夏休みですね。1学期、皆さん、頑張りましたね。夏休みは、何をしますか? プールや海に行きますか? いろいろな本を読んでみますか? 友達と遊びますか? お家の人とどこか遠くに出かけますか? 楽しみですね。そして、今年の夏も、大好きなこと、一つか二つ、また見つけてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り6

算数・数学

 

 知的障害のある児童生徒に、国語、算数・数学、理科、社会といった各教科をどのように教えていくのか、そして、何を教えていけば良いのか、という問いは、何十年も前から、この知的障害教育の分野における根源的な問いであり、そしてまた、今でも最も大切な問いの一つです。

 

 先日、プレイルームでは、小学部のはな組(1〜2年生)が「はらぺこあおむし」(エリック・カール, 1969)の勉強をしていました。日曜日の朝に生まれたあおむしが、月曜日はりんご、火曜日は梨、・・・と、いろいろなものを食べながら成長していく物語で、やがてさなぎになって、ついには美しい蝶に成長していくお話です。子どもたちは、いろいろな食べもののカラーパネルを持っていて、正面の白板に貼られた曜日毎の黒白シートの食べ物と同じカードを持っていれば、それを合わせにいきます(形合わせ)。月曜日は食べ物が一つ、火曜日は二つ、水曜日は三つ、・・・と、一つずつ数が多くなり、あおむしが大きくなっていく過程を楽しんでいました。

 

 小学部のつき組(3〜4年生)の教室では、4色に色分けされた二人一組のチーム(赤、黄、青、緑のビブスで区別された4チームで、各組2人ずつ。)が、ゲームでボールを集めました。そして、教室前面のボードに、集めたボールの数に応じて、その数だけマグネットを貼っていきます。4チームの表が出来上がりました(見方によっては、表ではなく図。)。そして、一番多かった組は満点の10点。皆からの祝福の拍手の後、金メダルを首にかけてもらい、嬉しそう。さらに、その表の10点のところに、係りの子が金色の王冠パネルを貼りました。

 

 この2つの算数の授業には、そのような発達段階の子どもに適した様々な大切な算数の概念の習得が、上手い具合に盛り込まれていました。

 

 幼・小・中・高と一巡りして、少しして、また、はな組に行くと、給食中。カレーうどん、ワカメの付け合わせ、カボチャの胡麻和え、牛乳。そのカボチャ、お皿に、子どもは二つずつ、先生は四つずつ入っていて、どちらが少ないか、担任が子どもに問いかけていました。問われた子どもは、両方のお皿を見比べ始めました。「えーっと・・・」

 

 このような指導、5〜6年生は?、中学部は? 高等部は? そして、幼稚部では? そして、学部間の関係性は? さらに、社会や理科や国語は?・・

校長 柘植雅義

校長室便り5

「ぼくは、しごとをがんばる、おとなになります。」

 

 先日の土曜日、教員免許状更新講習会が本校であり、翌週の月曜日の日程と振り替えて、授業が行われました。講習会に参加する関東地区の学校の教員の方々の他、筑波大の他の附属学校からの見学者、そして、本校の保護者向けの授業公開日でもあって、コンパクトな付属大塚は大賑わいでした。

 

 合同朝会では、幼稚部から高等部までの全員が体育館に集合して、振ると音が鳴る「なるこ」という楽器等を持ってダンスをしました。

 小学部低学年の方に行くと、ある子が、自分が持っていた楽器を私に差し出してくれました。そして、その子は、自分の楽器を、楽器の入っている箱の方へ探しに行きました。

 また、中学部の子らがいる方に行くと、二人で向かい合って踊ったり、そのダンスをよく知っている子が他の子に教えたりする様子がありました。先生の横で、いろいろ教えてもらいながら一緒に踊っている子もいました。

 雨が降ってとても寒い日でしたが、皆で踊ると何だか心も体も暖かくなっていきました。

 

 その後、各学部に分かれて授業が始まりました。

 幼稚部では、奥の方のプレールームで、足漕ぎ型の自動車とかトラックとかを乗り回す元気のよい子らがいました。ある子は、パイナップルの模型を大事そうに持ってハンドルを握っています。またある子は、後ろの荷台に電車の絵本をのせて漕いでいます。時々、後ろの荷台を見て絵本がちゃんと載っているかどうか何度も確認しながら。単に、足で漕いで進むだけなく、何やら豊かな広がりとか深まりとかを感じました。

 高等部のあるクラスでは、現場実習の振り返りの授業をしていました。一人一人が、教室の前に出てきて。実習の様子のビデオを紹介したり、頑張ったことやもっと頑張りたかったことなどを発表したりします。実習期間中、駅弁の弁当箱を組み立てる作業に取り組んだりある子は、発表の最後に、現場実習を終えて、これからの目標として、「ぼくは、しごとをがんばる、おとなになります。」と、自分で印字して作成した文章を教室の前面に大きく映し出して紹介していました。この子は、言葉で相手に伝えることはあまり得意ではありませんが、文字のボタンを押せば発音してくれる装置や、種々のICT機器等を駆使して、相手とのコミュニケーションを楽しんでいます。

 

本校の子どもたちへ

 このまえの合同朝会のとき、みなでした「なるこ」のダンスはとても楽しかったですね。そして、そのまえに、校長先生は、ルールとマナーのお話を皆さんにしましたね。ルールやマナーを大切にする人は、きっとりっぱな大人になれます。そして、大人になってしごとをするときにも、ルールとマナーはとても大切ですよ。

校長 柘植雅義

校長室便り4

世の中は皆の仕事で出来ている

(運動会)

 

 運動会が近くなったある日、用務員の方が、運動場やその周辺の、草むしり、ごみ拾い、釘等の危ないものの撤去などを、丁寧に時間をかけてしている姿が見えました。

 また、本校では、毎年、運動会が近くなったある日、給食メニューにいろいろに調理されたカツがでます。カツ丼とか、とんカツとか、・・・。今年は、鳥カツ丼。紅白戦で勝つ(カツ)ようにと。この時期、子どもたちの楽しみの一つです。

 そして、運動会の前日の朝、正門を入ったところの花壇に、副校長が色鮮やかないろいろな花をいくつか植えていました。赤や白が特に多いですねと話しかけると、明日は運動会だから・・・。

 

 運動会当日は、毎年、近隣の大勢の大学生が、様々なお手伝いをしてくます。「タイヤ引き」のタイヤや綱引きの綱等の大道具の出し入れや、得点板(紅白の勝敗板)に赤か白かのプレートを貼る作業。なた別のいくつかの大学の学生は、紅白リレーや学部別ダンスや応援合戦では、声を出したり拍手したりしての応戦。運動会の閉会後は、テントやシート、パイプ椅子等の片付けも。

 3階の校舎の屋上からは、運動場に入りきれない50名ほどの筑波大の他の附属学校の教員らが研修見学。時々、そちらの方を見ると、ずっと立ちっぱなしで、拍手をしたり、声を出したりして、子どもたちを応援してくれました。

 そして、本校の子どもたちや父母のみならず、きょうだいや祖父や祖母、親戚の人々も大勢。本校を卒業して何年も何十年も経ったOB・OGも毎年、駆けつけてくれて。

 

 運動会が終わり、子どもたちや保護者の方々も帰宅し、教員による片付けもだいたい終わった頃、今年の運動会の総責任者の教員が、運動会が無事に終わったこと、たくさんの参加や応援への感謝の気持ち、などを早速、HPに掲載へ。

 

本校の子どもたちへ

 今年の運動会も、とても楽しかったですね。そして、素晴らしい運動会でしたね。それは、皆さんが先生方と一生懸命に練習をして、運動会の日に頑張ったからです。それから、皆さんのお家の人やお客様が、拍手や大きな声でずっと応援してくれていましたよ。毎月の避難訓練で来てくださっている警察署の安心・安全担当の方も、本部席でずっと見守ってくださっていましたよ。それから、風で飛ばされた誰かのゴミを片付けてくれている大人の人がいましたよ。そんな方々に、ありがとうございました、と心の中で言っておいてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り3

初めてのカレーライス

 

 先日、幼稚部に入学した幼児、それに、小学部1年生に入学した児童にとっての初めての給食の日、つまり、附属大塚のすべての子どもが揃って食べる初めての給食の日のメニューは、カレーライスでした。毎年、4月のこの特別な日のメニューは、カレーライス。

 誰もが好きで食べやすいカレーライスを、さらに食べやすいように調理して味付けした特別メニュー。無理なく楽しく附属大塚の給食がスタートできるようにとの配慮です。

 

 幼稚部の教室では、新入生が、小さな器に少しだけ入ったカレーを、スプーンでほんの少しだけよそって食べていました。「おいしいね」「食べようね」「カレーだね」などと、先生方からいろいろな言葉が笑顔と共に発せられます。そうか、何やらこのカレー、おいしいらしい、という雰囲気になっていくことでしょう。入学したばかりの初めての学校で、知らない友だちや先生方との初めての給食で、緊張が少しずつほどけていくような感じがしました。

 

 小学部の花組(1〜2年生)では、1年生の新入生歓迎会が終わって、お母さんから離れてちょっと悲しくなって涙を浮かべながら、スプーンでカレーを食べる子。でもよく見ると、カレーのかかったご飯だけ食べて、玉ねぎとかニンジンとかを上手い具合によけています。その様子を確かに見ていた隣の先生が、でも、「おいしいね」「おいしいね」と言って食事を促します。そしてまた、その子は、カレーのかかったご飯だけを食べます。おいしそうに。

 

新入生の幼稚部・小学部の子どもたちへ

 カレーライス、おいしかったですね。でも、玉ねぎやニンジンは食べにくかったですか。サラダのブロッコリーが食べられない子もいましたね。シューアイスがとても冷たくてゆっくりゆっくり食べた子もいましたよ。でも、大丈夫。附属大塚の給食は、とてもおいしくて、食べやすいです。だから、少しずつ、少しずつ、やがて、ぜんぶ食べられるようになりますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り2

ラオスとアメリカと日本

 

 先日、タイ、カンボジア、ベトナム、中国、ミャンマーに隣接するラオスの教育・スポーツ大臣が来日された期間中のある日、日本のインクルーシブ教育(inclusive・education)についてのレクチャーと質疑応答を求められ、1時間ほどを過ごしました。大臣は、日本のインクルーシブ教育に強いご関心があり、今回の訪問が、ラオスにおけるインクルーシブ教育のさらなる充実発展に少しでもお役に立てればと思います。

 

 また、先日は、アメリカ大使館主催の「アメリカの障害者雇用への取り組みと経済効果」と題したチャレンジングな講演会に参加しました。米国でコンサルティング会社を経営する障害のある方が講師。7%の障害が、健常者と共に、健常者と同じように、生き生きと働いている様子が紹介されました。そして、何と各社会の障害者雇用の状況(実態)を測るためのインデックス(指標)が構築され、活用され、結果が公表されていました。

 

 日本は、寿司とか天ぷらとか、マンガとかアニメとか、新幹線とか自動車とか、富士山とか 奈良・京都とか、・・・世界に誇れるものがたくさんあり、他国からの憧れの国です。でも、障害のある子どもの教育(特別支援教育)も、(ラオスやアメリカや)世界各国に輸出できたらいいな(カッコいいな)と常々思っています(柘植, 2013)。本校は、教育憲章で、世界最高水準の知的障害教育を目指すとして、そのために5つの事項を掲げていますが、その一つが、正に、教育の成果を国内外に広く発信していくこと、です。

 

本校の子どもたちへ

 附属大塚には、いろいろな国からお客様が来てくれますね。お客様は、皆さんが、楽しそうに、一生懸命に、勉強したり、運動したり、行事をしたりしているところを見てくれているのですよ。もしかしたら、いろいろな国の学校でも、附属大塚と同じ勉強とか運動とか行事とかをしているかもしれないですよ・・・。何だか、嬉しいですね。

校長 柘植雅義

校長室便り1

子どもたちの幸せや夢の現実に向けて、一緒に取り組んでいきましょう。

(2018年4月10日(火)入学式 校長挨拶)

 

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。皆さんが、この4月に、附属大塚に入学して来ることを、心待ちにしていました。

 

 附属大塚は、とても楽しい学校です。

 それは、いろいろな勉強があるからです。音楽とか図工とか体育とか、国語や算数・数学、理科や社会、英語も勉強しますよ。それから、作業学習や現場実習、・・・。もうすぐ運動会ですね。秋になると大塚祭、冬になるとスキー、それから、宿泊学習や、高尾山登山とか、修学旅行とか、・・・。

 それから、先生方が、一生懸命に上手に教えてくれるので、分からないことや、難しいことも、少しずつ分かっていきます。いいですね。

 それから、先輩や先生方が、とても心が優しいです。何か困っていると、すぐ近くに来て、声をかけてくれます。そして、一緒に考えてくれます。

 だから、附属大塚は、とても楽しい学校です。

 

 附属大塚で「得意なこと・好きなこと」を探してください。

 何な得意なことを見つけてください。言葉では上手くお話しできないけどタブレットや音声ペンを使って相手とお話しすることが得意ですとか、難しい足し算とか引き算とかが得意ですとか、走ることが得意で運動会のリレーで1等賞をとりますとか、・・・。

 それから、学校の勉強の他に、何か好きなことを見つけてください。歌が好きでカラオケに行きますとか、いろいろなラーメンを食べ歩きしますとか、電車に乗って写真を撮りますとか、パソコンで作曲しますとか、昔の物語をいろいろ読みますとか、マラソン大会に毎年参加しますとか、・・・。

 得意なこと・好きなことがたくさんある人は、幸せです。

 

 最後に、皆さんのお家の人にお話しをしますので、皆さんは少し待っていてください。

 保護者の皆様、本日は、入学おめでとうございます。

 日本には、1000校の特別支援学校があり、何万校もの幼稚園、小学校、中学校、高等学校がありますが、その中から、本校を選んで下さり、ありがとうございます。

 本校は、教育憲章に掲げているように、世界最高水準の知的障害教育を目指しています。これは、難しいことかもしれません。でも、皆様方が本校の教育にご理解いただき、ご協力いただくことができれば、きっと、その夢は叶えられると信じています。どうぞ、よろしくお願いします。

 子どもたちの幸せや夢の現実に向けて、一緒に取り組んでいきましょう。

 

 これで、お祝いの挨拶といたします。

校長 柘植雅義

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