校長室便り

平成27年度 校長室便り

国連 世界自閉症啓発デー4.2 ブルーカー・パレード
国連 世界自閉症啓発デー4.2 ブルーカー・パレード

柘植雅義

 

筑波大学附属大塚特別支援学校校長

 

筑波大学教授(人間系 障害科学域) 

校長室便り26

春が来た

 

 卒業式が終わり、先日、修了式と離任式がありました。ある教室では、3月でこの学校を離れる教員が、子どもと保護者の前でゆっくりと丁寧に挨拶をした後、歌を歌いました。「春が来た、春が来た、どこに来た、・・・」 皆も一緒に歌い始めました。今年も、附属大塚から、たくさんの子どもや同僚が、新たなステージに羽ばたいて行きます。

 

 3月も半ば過ぎになると、いよいよ附属大塚の教員は、1年間の振り返り、引き継ぎ、そして、来年度の構想と準備に追われます。春が来る頃、毎年繰り返される、1年間で最も大切な時期です。もっと魅力的な附属大塚に育てていくための助走の始まりです。

 

 教師は、保護者と違って、子どもたちを何年も何年も、そして、生涯に渡って教育していくことはできません。基本的には、1年、1年の繰り返しです。ですから、1年、1年が真剣勝負です。1年が過ぎると、別の教師にバトンを渡して託していきます。

 

童謡「春が来た」(高野辰之作詞、岡野貞一作曲)は、今から100年以上も前、小学校唱歌として発表されました。幼稚園、小中高等学校、大学と、およそ教員という職についている者は、この歌を聞くと、日本の美しい四季の移り変わりだけではなく、きっとそんな特別な思いを抱いてきたことでしょう。

 

 そういえば、こんな話しを聞いたことがあります。ある小学校の教員が3月の異動の時、クラスの男の子がランドセルからお守りをはずして、手渡してくれたそうです。「僕は大丈夫だから」と。

校長 柘植雅義

校長室便り25

「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

(2016年3月15日 卒業式 校長挨拶から)

 

 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんがこんなに立派になって、また少し大人に近づいてくれたことがとても嬉しいです。

 

 今から3つのお話をします。「感謝」ということ、「夢」ということ、そして、お家の人へのお話しです。

 

 まず一つ目のお話しです。卒業生の皆さんは、附属大塚での勉強や運動や行事、楽しかったでしょう。それは、皆さんが、いつも友達と仲良くし、先生方の話をよく聞き、皆さんが一所懸命に頑張ったからですよ。それから、先生方が、皆さん一人一人のことを大切に思って、皆さんにいろいろ教えてくれたからです。そして、何と言っても、皆さんのお家の人が、そんな皆さんを助けてくれていたからです。だから、頑張った自分や、いろいろ助けてくれた先生やお家の人に、「ありがとう!」と心の中で言っておいてくださいね。

 

 次に二つ目のお話しです。校長先生から皆さんにプレゼントがあります。とても良いプレゼントです。それは、校長先生が皆さんの様に子供の頃、卒業式で、その時の校長先生が皆にプレゼントしてくれた言葉です。

 その言葉を言います。

 「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

 もう一度言います。

 「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

 小さな“かたつむり”が、日本一高い富士山に登るのは大変です。でも、夢に向かって、登るぞという気持ちを持って、ゆっくりゆっくり進んでいくと、きっと上の方まで行けると思いますよ。そして、附属大塚は、そんな皆さんをこれからもずっと応援していきます。

 

 三つ目のお話しは、お家の人にしますので、皆さんは少し待っていてください。

保護者の皆様に一言お礼を申し上げます。本日はお子様のご卒業、真におめでとうございます。本日このように子供たちが卒業を迎えられたことは、皆様方の日頃の、附属大塚の教育への深いご理解と様々なご協力の賜物と感謝しております。

 子供たちは、4月からそれぞれの進路に向かって新たなチャレンジを始めます。その道のりはとても楽しくきっと明るいものと信じています。しかし、途中、大きな困難にぶつかるかも知れません。どうぞ、未来に向けてたくましく自立していくお子さんに、これまでと同じ様に暖かく寄り添って見守ってあげていってください。

 

 これで、お祝いの挨拶といたします。卒業生の皆さん、卒業おめでとう!

校長 柘植雅義

校長室便り24

サッカーゴールの前で「大」の字になって

(意思の表明)

 

 真冬なのに、風もなく良く晴れた暖かい日、ふと運動場を見ると幼稚部の子らがボール遊び。その日は、中学部と高等部が休みということもあり運動場を独り占め。

 

 ある子が、私にサッカーボールを手渡すと、ネットの張られた小さなサッカーゴールの方に走って行って、こちらを振り返って、小さな両手両足を「大」の字に広げて真剣な様子。「さあ、蹴って!」とでも言っているように。「蹴るよ!」と言ってボールを蹴ると、ボールの方に駆け寄って行って両手で掴んで、何やら声を発してとても嬉しそう。そして、またボールを私の方に返します。

 今度は、別の子が、ドッチボールを片手で持って、私の方に小走りに近づいてきて、「エー!」と言って投げると、私の方をじっと見ています。「ちゃんと、取ってね!」とでも言っているよう。転がるボールの方に私が走っていくのをじっと見ていて、拾って投げ返すと、「アー!」と言って、大きく体を揺らして転がるボールの方に走っていきます。

 

 この二人の女児のように、言葉で意思の表明をすることが困難でも、表情や身振りや行動で相手に伝えることができます。子どもたちが発する様々な「意思の表明」を素早く的確に理解し、それに応えていくことが、知的障害教育では非常に大切ですし、今後ますます重要なことになっていきます(障害者差別解消法の「合理的配慮」の視点から)。子どもたちは、日々の授業で担任の先生方とそのようなコミュニケーションの勉強をしています。そして、いつもはいない私に対しても、そのような意思の表明が上手くできた(「(対人)般化」)、ということなのでしょう。

 

 本校の子どもたちへ

 このまえのサッカーとドッチボール、みな、とても上手でしたね。校長先生も楽しかったですよ。こんどは、小学部や中学部のお姉さんやお兄さんといっしょに遊ぼうね。

 

校長 柘植雅義

 

校長室便り23

未来を描くカリキュラム

 

 教育という営みは、とても大切です。なぜなら、全ての人の夢に寄り添い、その実現を支えていこうとする活動だからです。ですから、日々の授業やカリキュラムは、実は、常に未来を志向しているのです。

 

 知的障害教育に係る授業や授業研究が、これから大きく変わる兆しがでてきました。近年の急速な指導方法の充実、それを支える学術研究の発展、科学技術や医学の進歩、障害者差別解消法などの法的整備とそれに伴う教育や福祉のサービスの充実、・・・。とても良い時期に突入した、という感じです。ですから、まさにこの様な時期に、授業や授業研究の未来はどうなっていくのだろう、それを支えるカリキュラムはどのように変えていけばよいのだろう、という問いを掲げ議論していくことが重要です。

 

 先日、本校で、公開研究協議会が開催されました。沖縄から北海道まで全国各地からのたくさんの参加者で、コンパクトな附属大塚がまたしても大渋滞。テーマは「未来を描くカリキュラム」。

 

 本校の子どもたちへ

 皆さんは、将来、どんな大人になりたいですか? どんな仕事をしてみたいですか? そして、夢は何ですか? それが叶うように、附属大塚の皆さんの先生方は、いろいろな勉強を教えてくれていますよ。そして、もっと勉強したいことがあったら、担任の先生に教えてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り22

 

 雪は美しいです。小船のようにひらひら揺れてゆっくり落ちてきて、まもなくカラフルな町が真っ白に。

 雪は強いです。地面に積もって強く硬く固まります。時に、人や自転車や車も電車も止めてしまうくらい。

 

 先日の東京都心、夜中に雪が降りました。このような時は、いつも、早朝、職員が手分けして校門の辺りや付近の通学路の雪かきをします。滑らないように、転ばないように、怪我をしないように。やがて通学の時間、上手い具合に雪かきされた通学路を通って子どもたちは学校へ。久しぶりの雪に興奮しながら。

 

 当たり前のように繰り返される安心で安全な日常、でも、そのために実は多くの人々の心遣いや工夫や作業といった後方支援が背後にあるということ(社会生活の営み)。知的障害のある子どもに、そのことをどのように教えていくのか。そして、時には、そのような後方支援に携わる立場になることの意義と方法をどのように教えていくか。考えてみたいと思います。

 

 本校の子どもたちへ

 いよいよ、待ちに待ったスキー合宿ですね。持っていく荷物は、かばんに全部入りましたか。忘れ物はありませんか。今年も、きっと楽しく元気よく滑ったり遊んだりできると思いますよ。帰りのバスに乗るとき、ホテルの人に「ありがとうございました」と感謝しましょう。そして、附属大塚に着いてバスを降りるとき、運転手さんに「ありがとうございました」と感謝しましょう。そして、お家に帰ったら元気よく「ただいま」。

校長 柘植雅義

校長室便り21

福島県立いわき養護学校くぼた校と福島県立勿来高等学校

 

 「この9か月間、大成功でしたね。どうして、こんな短期間で、このような成功を収めることができたのですか?」 

2015年の年末、福島県立いわき養護学校くぼた校と福島県立勿来高等学校の校内研修会に招かれ、会の冒頭、2015年の4月から12月までの9か月の取り組みの成果を2030分ほど聞いた後の、助言者としての私の率直な印象でした。両校の校長先生を始め、県教育委員会、くぼた校に続く分校準備室の方々、20名ほどの小さな関係者の会でした。とても小さな研修会でしたが、何かとてつもなく大きな流れがまた一つ、日本で始まるんだ、というような不思議な感覚を覚えました。

 

 特別支援教育の時代になって、高等学校の中に特別支援学校の分教室や分校を開設するという取り組みが、全国各地で始まっています。静岡の伊豆から始まり、京都、兵庫、愛知、・・・。一昔前では、考えられなかったような取り組みです。インクルーシブ教育時代の、まさに象徴的な実践です。

 

 日本中の全ての高等学校に、かならず特別支援学校の分教室や分校が設置される時代になるといいだろうなと思います。私立であろうと、国立であろうと、公立であろうと。やればできる、いや、そうしなくてはいけないのではないかと、くぼた校から学びました。

 

 本校の子どもたちへ

 附属高校や附属坂戸高校や附属駒場高校の友達と、年に何回も一緒に勉強しますね。いつも、楽しいですね。皆さんは、その3つの高校のお兄さんやお姉さんからたくさん教えてもらっていますね。でも、皆さんも、そのお兄さんやお姉さんに、いろいろ教えてあげているのですよ。

校長 柘植雅義

 

校長室便り20

鉄腕アトム

 

「空をこえて ラララ 星のかなた ゆくぞ アトム・・・」、遠い昔に流行ったTVアニメ“鉄腕アトム”の主題歌(作詞:谷川俊太郎、作曲:高井達雄)を、高等部の生徒が体育館のステージで合奏。ピアノ伴奏の教師の指揮で、いろいろな楽器を使って。この前の月曜日の合同朝会のことです。

 アトムの後、さらに続けて何曲かが披露されました。この合奏、12月も間もなく終わる学期末、高等部の生徒から全校生徒へのプレゼントとのことでした。アトムは「科学の子」、とても強く、元気いっぱい。そして、「心やさしい」、「心ただしい」、「心はずむ」。今でも、子どもたちの憧れなのですね。

 

 合奏が始まって、体育館の一番後ろの方へ行ってステージの方を振り返ると、幼稚部から高等部まで全ての子どもたちが、何やら、皆、カッコいいアトムに見えてきました。

 

 合奏がすべて終わり、興奮冷めやらないまま合同朝会も終わりに近づいたころ、突然、緊急放送。「訓練、訓練、地震が発生しました。・・・してください。・・・してください。・・・地震がおさまりました、・・・玄関前に避難してください。」 本校では、いろいろなスタイルの避難訓練を、年間を通して何度も行います。大勢のアトムたちが、先生と一緒に、静かに、素早く、安全に、玄関前に移動していきました。

 

 本校の子どもたちへ

 このまえの合同朝会、高等部のお兄さんお姉さんが楽器で演奏してくれましたね。とても楽しかったですね。からだをゆらしている幼稚部の子もいましたよ。校長先生が小学1年生の時の音楽祭、体育館のステージで、アトムの歌を皆で歌ったことを思い出しました。皆で歌っていると、ステージの上の方から、大きなアトムの絵がゆっくりおりてきて、とってもドキドキしたこと、今でもよくおぼえていますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り19

問1:どの季節が好きですか?

(子どもたちが取り組むアンケート調査研究)

 

 「校長先生、アンケートお願いします。」と中学部2年生の生徒に頼まれました。11月の大塚祭の、何週間か前のことでした。季節についてのアンケートを、本校の全教員にするというのです。問は、どの季節が一番好きか?、春夏秋冬の各季節と言えばそれぞれ何を思うか?、それぞれの季節に何を楽しむか?、などがいくつか。

 

 何日かして、ポストイットや電卓を使って、アンケート結果を集計する授業が行われていました。春夏秋冬の4枚のパネルに、ポストイットを張っていきました。KJ法(川喜田二郎法)かな。回収したアンケートの内、一人だけ、一番好きな季節を答えず「どの季節も好きです」という回答があって、それをどうしようかと悩んでいました(すみません、その回答は私です)。

 

 アンケートの集計結果は、大塚祭の午後、中2の教室で披露されていました。プレゼンテーションは、もちろん子どもたちで。そして、先週、アンケートへの協力のお礼の手紙が、校内の教員に届けられました。発表会も終わったこと、たくさんお客さんが見てくれたことなどが書かれていました。

 

 このような活動、まるで研究者が行う学術研究とその成果の学会発表といった感じです。中2になると、このような活動を行うのが恒例となりつつあり、昨年は、“ドレミの歌”の替え歌を、校内で公募し、選考していく、というものでした。選ばれた替え歌は、今年、大塚祭で披露されました。

 

 本校の子どもたちへ

 花のこととか虫のこととか、分からないことや、知りたいこと、たくさんありますね。自分一人で調べたり考えたりするのではなく、友達と一緒にすることも大切ですよ。そうすると、きっと、もっともっとたくさんのことが分かってきますよ。今度は、お家の人にも、どの季節が好きか、聞いてみてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り18

大塚祭

(人が一つずつ成長していく、ということ)

 

 人が一つずつ成長していく姿は美しいです。そして、その様子を垣間見ることはとても嬉しいです。それが、子どもであっても大人であっても、障害があってもなくても。大きな成長や急速な成長は分かり易いです。しかし、とてもゆっくりとした成長やほんのわずかな成長でも、その変化に確かに気づき、そこに至った経緯や背景を考究し、次なる一歩に向けた最適な支援の設計をすること、これが知的障害教育には欠かせません。

                                                                                                                                                    

 50年以上前から続く附属大塚の伝統行事、大塚祭。今年のテーマは、『笑顔がいっぱい 大塚祭 キラキラ未来へ レッツゴー!』。観客で満員の体育館、今年のオープニングも、着物を着た高等部生徒による華やかな花笠音頭で始まりました。大塚祭が近づくと、劇や歌の練習、大道具・小道具の制作、作品展示の準備と、どの学部もそれらに関する授業が続きました。練習風景を見る度に、どの子もこの前に見た時と比べてセリフや演技が上手になったなあ、と気付くことが多々ありました。

 

 成長したのは子どもだけではないでしょう。子どもと共に取り組んだ教師も、きっと新たな発見をし、学び、自信を持ったことでしょう。そして、そのような教師らの集合体としての附属大塚も、また一つ成長したのだと思います。午前中のプログラムの最後、中学部生徒の進行によるフィナーレが終わった後、今年の大塚祭の総監督の教員から、午前中の振り返りと午後のプログラムの案内が丁寧になされました。話の中、皆とても頑張ったと伝えられると、体育館が子どもたちの笑顔でいっぱいになりました。

 

 本校の子どもたちへ

 大塚祭、楽しかったですね。幼、小、中、高のステージ発表や午後の作品展示、どれもとても良かったですよ。予行練習も見てくださっていた皆さんお家の人が、「練習の時は上手くできなかったのに、本番の今日は上手にできていてびっくりしました。」と話してくれましたよ。

校長 柘植雅義

校長室便り17

学校の先生になるのが夢

(教育実習)

 

 先日、幼稚部の教室では、教育実習生2名が共に中心指導者になって、設定保育「表現」の授業が行われました。題材名は「おなかいっぱい」。先ず「おなかいっぱいの歌」、そして「おいしそうなぶどう」、「おなかいっぱいの歌」、「サンドイッチ、サンドイッチ」、「おなかいっぱいの歌」、「てのひらピザ」、そして最後にもう一度「おなかいっぱいの歌」、という面白い流れ。「サンドイッチ」のところでは、子どもたちが首から、チーズとか、ハムとか、レタスとかの絵カードをぶら下げます。そして、パン型の大きな手袋をはめた子や先生が、具材役の子を挟んでいきます。何やら本当にサンドイッチになった気分。

 一方、小学部の教室では、来週の授業に向けて、実習生が教員からアドバイスをもらいながら準備が進んでいました。ある教室では朝の会の進行の場面、別の教室では目隠しして福笑い(顔の認知?表情の認知?)。来週も楽しみです。

 

何週間かの教育実習期間の最後の方になると、実際に学習指導案を作成して、自分で授業をしてみて、その後に反省会をします。教育実習の集大成です。

 ちょうど、大学の附属病院が、大学が進める医学研究と連動して最先端の医療を提供しながら、将来のりっぱな医者を育てていくように、本校では、大学の附属学校として、最先端の教育を提供しながら、将来のりっぱな教師を育てていきます。

 

 本校の子どもたちへ

 この前は、お姉さんやお兄さん方が、勉強を教えてくれましたね。そして、一緒に給食を食べたり、一緒に遊んだりしましたね。お姉さんやお兄さん方は、学校の先生になるのが夢ですよ。いつかどこかで、また勉強、教えてもらおうね。

校長 柘植雅義

校長室便り16

Lesson Study

(授業研究会)

 

 『学習指導案がとても丁寧で詳細です。先生方の指導がとても上手いです。そして、子どもたちが楽しく勉強していました。』 先日、本校の授業研究会に参加されたインドネシア教育大学の教授が、日本語でして下さったコメントの一部です。

 

 本校の授業研究会は、朝から夕方まで1日かけて行われます。年に何回も行われ、今回は、幼稚部と小学部の全ての教室の授業が対象。中学部と高等部の生徒は登校せず、幼稚部と小学部の子どもも、朝一番のその1時間の授業が終わると下校します。そして、毎回、アドバイザーとして国内の大学教授らも何人かが参加します。

 

 本校は、世界最高水準の知的障害教育を目指しています。ですから、世界から学ぶこと、そして、世界に発信することが欠かせません。実は今、日本で発案された授業研究会という素晴らしい仕組みが、Lesson Study(レッスン・スタディー) として世界中で注目され始めています。半年前の授業研究会のゲストは韓国からの3名の教員でした。

 

 本校の子どもたちへ

 このまえは、たくさんの先生や外国のお客さまが、みなさんの勉強をみにきましたね。

幼稚園のみなさん、カレーと洗濯の勉強、たのしかったですね。「ぐるぐる、ぐるぐる」といって何回も走って回りました。

小学生のみなさん、ともだちと二人で手をつないで歩くこと、ともだちの目を見てお話しすること、うまくできていましたよ。それから、二人で協力してボールを穴に入れるゲーム、今度は校長先生もやってみたいです。それから、二人でいっしょに写真撮影のポーズをとる勉強のあとで、友達のがんばったところをほめることができました。

外国のお客さまが、みなさんがとてもがんばっていたと、ほめてくださいました。よかったですね。

校長 柘植雅義

校長室便り15

予定の急な変更

 

 予定の急な変更は辛いですね。心の準備や物事の準備が台無しです。でも、世の中、実は予定の変更は頻繁に起こります。そして、知的障害や発達障害のある子どもは、この予定の急な変更が特に苦手だと言われています。

 

 先日、中学部3年生が修学旅行の岐路につく直前、沖縄の空港で搭乗するはずだった航空機に故障が見つかり、3~4時間も待ちぼうけだったとのことです。東京の空港で待つ保護者の方々、少し不安そう。でも、到着口から、子どもたちと一緒に出てきた教員が皆、「おかげで予定よりたくさん沖縄に居られた。」「ゆっくり夕食が食べられた。」など、遅れてしまったことは、たいしたことなかったよ、むしろ良かったよね、ということを、口を揃えて子どもたちに話し始めたのです。きっと、現地の空港でパニックになりそうな子どもたちを、そのように宥めて、落ち着かせて、最後の沖縄での時間を楽しく過ごしたのでしょう。

 

 明日は、3.11の“東北福呼”(“東北復興”をもじって?)をキャッチフレーズに、ここ何年か東北の各地を修学旅行先にしている高等部2年生が、新幹線で東京駅に帰って来ます。

 

 本校の子どもたちへ

 修学旅行とか、小学部の宿泊学習とか、中学部高等部のスキー合宿とか、附属大塚から遠く離れたところに友達や先生と一緒に、バスや電車や飛行機で行きますね。ホテルに泊まりますね。その時、もしかしたら、雨がたくさん降ったり、乗り物が壊れたりして、予定が急に変わることがあるかもしれませんよ。でも大丈夫。皆さんの先生方が、いつもそばにいるから。

校長 柘植雅義

校長室便り14

実りの秋

201591日 始業式 校長挨拶から)

 

 皆さん、おはようございます。

 

 久しぶりですね。今日、皆さんが、とても元気に附属大塚に戻って来てくれたこと、校長先生はとても嬉しいです。皆さんの担任の先生も、きっと嬉しいと思いますよ。

 

 夏休み、楽しかったですか? おいしいものたくさん食べましたか? プールに行きましたか? 電車や飛行機に乗って遠くに行った人もいるかな? おじいちゃんやおばあちゃんと一緒に遊んだ子もいるかな?

 それから、夏休みに入る前に校長先生と約束した、お家のお手伝い、やりましたか? 今度、合同朝会で聞きますよ。そのときに教えてくださいね。

 

 最後にもう一つお話をします。9月、10月、11月は秋です。校長先生は、夏が大好きです。春も大好きです。冬も大好きです。そして、秋も大好きです。秋は、実りの秋だから、大好きです。皆さんの好きな野菜も果物も秋になるとたくさん成長します。とてもおいしくなります。それから、子供も大人もたくさん成長します。だから、校長先生は、秋も大好きです。

 夏休みに、校長先生が附属大塚に来たら、皆さんの先生方が、9月からの勉強の準備をしたり、教室を掃除したりしていましたよ。

 皆さん、たくさん勉強して、たくさん運動して、そして附属大塚を楽しんでくださいね。

 

 これで、校長先生のお話を終わります。

校長 柘植雅義

校長室便り13

石井 筆子

(いしい ふでこ)

 

 今から150年以上前、現在の長崎県大村市に筆子は生まれました。日本政府からの要請で、10代でフランス留学、そして、津田梅子と共にアメリカで開かれた国際会議に参加してスピーチ。使命は、女性の人権の向上でした。

 やがて、津田梅子は女性の高等教育を受ける権利を広げる方向へ(津田塾大学として結実)。一方の石井筆子は、石井亮一による日本初となる知的障害(当時は、精神薄弱)のある子供の指導を行う施設、滝乃川学園の運営に携わり、障害のある子供の人権の向上へ。

 濃尾大地震により孤女となった子どもたちを集め、東京で学園を始めたが、どう教えてもなかなか学んでくれない子どもたちがいることに気が付いた亮一がアメリカに渡って知ったのが知的障害。その指導法を学び、滝乃川学園で指導を始めたのです。知的障害のある子供の、学ぶという権利に寄り添ったのですね。

 

 内閣府の障害者政策委員会は、来年4月の障害者差別解消法の施行を視野に入れ、様々な議論が急ピッチで進んでいます。ここ何回かは、障害者基本計画の進捗状況の監視に係る事項がテーマです。この8月、いよいよ佳境に入ってきました。そして、何度かの会議で、複数の女性の委員から繰り返し発せられたことがあります。それは、障害者であり女性である者の人権の大切さです。

 

 遠い昔、石井筆子が描いた夢。それを確かに実現させていくのは、今まさに、我々の使命だと思います。

校長 柘植雅義

校長室便り12

夏休みのお手伝い

 

 「お手伝い」って、とても素敵な言葉だと思います。英語では、単にHelp、でしょうか、あるいは、Work to help people? それは、将来、日常生活や社会生活で自立を目指す知的障害のある子供にとっては特に大切な勉強です。

誰かがすることを少し助けてあげるということ。でも助けてあげているうちに、助けてあげるのではなく、そのことをやがて一人で自主的にできるようになっていくかもしれません。さらには、それが自分の本来の仕事(役割)になっていくかもしれません。あるいは、もしかしたら、いつか誰かから「お手伝い」してもらうことになるかもしれません。

 何回か前の「校長室便り」で、「一人で頑張ること、誰かと一緒に頑張ること(春の運動会)」と題して書きましたが、自分のために頑張ること、と共に、友達やお家の人のために頑張ることも大切です。

 このようなことの基礎になるのが「お手伝い」なのです。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 もうすぐ楽しい夏休みですね。この前の7月の最後の合同朝会で、夏休みに皆さんがお家でどんなお手伝いをするか聞きましたね。「ご飯(を配ります)」、「食器を洗います」、「ゴミ出しをします」、「掃除(をします)」・・・、「お使い(買い物)」もあったかな。お手伝いを頑張ると、皆さんのお家の人のような素敵な大人になれますよ。きっと。

校長 柘植雅義

校長室便り11

附属駒場の高校2年生にゼミ「障害科学・共に生きる」をしてきました

 

(1)「障害者の価値(Value)とは何か?」

(2)「知能(Intelligence)は高ければ高いほど幸せ(Happiness)か?」

(3)「個性(Individuality)はこの世に本当に必要なものなのか?」あるいは、「障害は個性か?」

(4)「多様性(Diversity)のない社会は在り得るのか?」 あるいは、「障害者の差別・偏見・誤解はなくせるのか?」

 

 ゼミは、授業2コマ続きの計100分。私の講義「障害とは何か? 発達障害とは何か? -向き合い、共に生きていくために-」の後、このゼミを選択した25名の生徒が4つのグループに分かれて、上記の問いの内一つにチャレンジ。どれも相当な難問です(特に(1)は難しい)。そもそも用語の定義から始めなくてはなりませんし、それらを取り巻く背景(setting)も議論に欠かせない変数(variable)となります。

 

 私の研究室の博士課程の学生ら3名による巡回支援を受けながら、関連する本やPCを活用した情報収集などをして、30分ほどのグループ協議を経て、各グループからの5分のプレゼンで、ゼミは終了。テキストは『特別支援教育 -多様なニーズへの挑戦-』。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 皆さんが時々一緒に勉強する附属駒場のお兄さんお姉さんらと、この前、校長先生も勉強してきました。今度は、お兄さんお姉さんが附属大塚に来てくれますね。一緒にどんな勉強をしたいか、考えておいてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り10

サロン・ド・おおつか

 

 「附属大塚の魅力は何か?」

「附属大塚をもっと魅力的にするにはどうしたら良いか?」

 

60名近い幼小中高の各学部の保護者が混ざった6のグループのテーブル毎に、議論が進みます。“サロン・ド・おおつか”は、本校PTAによる恒例の催しで、年に1回、6月頃の平日の午前中、保護者と教員ら(管理職、カウンセラー、・・・)との貴重な情報交換の場。学校からは、管理職、主幹教諭、進路指導主事、それにスクールカウンセラーが参加しました。2~3時間ほどで、「附属大塚」という“子ども”をどのように育てていくか、たくさんのアイデアや夢が語られました。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 この前の月曜日、皆さんが勉強している時、皆さんのお家の人と校長先生らが一緒に別の部屋で勉強しました。皆さん、附属大塚、楽しいでしょう。でも、もっと楽しい学校にするために何か面白い考えがある人は、担任の先生に教えてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り9

「夏がくれば 思い出す はるかな尾瀬 遠い空・・・」

 

 “夏の思い出”(江間章子作詞・中田喜直作曲)。ずっと昔から音楽の教科書に繰り返し載ってきた、詩も曲もとても美しい歌です。先日の月曜日の合同朝会、音楽担当の教員4名(幼稚部、小学部、中学部、高等部から各1名)が合唱を披露してくれました。ピアノの伴奏も。

 その合唱を聞いた後、こんどは児童生徒も一緒に合唱。皆の歌声に合わせて楽しそうに体を揺する子、座り込んで聴く子、大きく口を開けて歌う子、ステージ前に大きく映し出された歌詞を見て正しく歌う子、・・・と様々です。2番まで歌うと、「もう1回歌おう。今度は、・・・のところ、こんな風に。」と司会の教師がその部分を歌って見せます。

 

 これらの合唱の前には、この歌の意味や場所(毎年、中高生がスキー合宿で行く所)などの説明が司会の教師からなされました。そして、「皆さんの夏の思い出は何ですか?」と聞かれると、「プール!」とか、「アルバイトです!」(お家でのお手伝いのことかな)、・・・と子どもたちが元気に答えていました。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 いよいよ夏ですね。何年過ぎても思い出すような、楽しい夏の思い出を、今年もたくさん作りましょうね。

校長 柘植雅義

校長室便り8

The 1st Asia-Pacific Conference on Inclusive Education

 

The other day, 1st Asia & Pacific International Conference on Inclusive education was held at the National Taiwan Normal University in Taipei, Taiwan. I was invited to the conference. At the conference, representatives of the four regions from Taiwan, China, South Korea, and Japan, gave a keynote speech about inclusive education from view point of current situation, challenges, and future direction  in each region. And then comprehensive discussion was held on. I was keynote speaker from Japan. In the conference, researchers, government personnel, school officials, and, graduate students et al had participated.

 

In my lecture, in the point of some specific advanced cases of inclusive education, I presented about the advanced practice at Otsuka school. One is the “support unit”. The “support unit” is helping the kindergarten, elementary and junior high, and high school in Bunkyo-district, Tokyo. As a result, Otsuka school has contributed to enhance the development of inclusive education in each school and community. Another is the “exchange and collaborative learning”. All children of section from kindergarten to high school is working on educational activities along with the nearby school. As a result, for children without disabilities, it has become an opportunity to advance the understanding of intellectual disabilities. Such activities, it will be expected to lead to the realization of a "symbiosis society" (Cabinet Office).

 

Message to the children in Otsuka school

As you well know, every year, many visitors from various countries will come to  Otsuka school. And they, always, will look at your learning and activities. In the near future, when the visitors come from abroad to Otsuka school, please tell them a fun learning and activities.

Principal:  Masayoshi Tsuge

校長室便り7

みそカツ、“勝”カレー、しらす丼

 

 4月のある日の給食は、みそカツ・・・やはりおいしいです。5月になって、運動会の前日は、カツカレー・・・正しくは“勝”カレー。そして、しらす丼・・・春から初夏の季節感満載。

 

 体を作るために食べる、皆と楽しむために食べる、食(材)の知識を学ぶ、そして、食を大切にする心と態度を養う、・・・と、学校給食の役割はとても大きいです。家庭との連携も大切。

 この4月5月は、幼稚部や小学部の新入生にとって、給食は大きなチャレンジです。それが、1週間、2週間と経っていくと、「牛乳、初めて一口飲みました!」「嫌いな野菜、少し食べました!」「口の中のごはん、飲み込みました!」「一人分を、全部食べました!」・・・と、教師の声が教室に響きます。何だか子どもも嬉しそう。

 知的障害のある子どもの食育は、どうあるべきか? 本校では、この問いを大切に、栄養教諭が研究&実践を進めています。他校とも連携して。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 給食、いつもおいしいですね。それはね、毎日、給食室で、たくさんの人がいろいろ考えて、いろいろ工夫して、そして、いろいろ協力して作っているからですよ。今日食べた給食のこと、お家の人にお話ししてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り6

一人で頑張ること 誰かと一緒に頑張ること

(春の運動会)

 

 プログラム終盤の紅白リレー。一人で元気よく走りきって次のランナーにバトンを渡したある生徒。しばらくすると別のあるランナーの番になって、その子の横について一緒に走っている姿がありました。

一人で走ることが苦手な子が、走ることが得意な友達がそばについて少し手を差し伸べて一緒に走ることで、皆と同じ距離を走ることができました。

 その双方の保護者の方々から、そのような支援の仕方について、とても良かった、との感想が聞かれました。

 

 知的障害のある子供も大人も、いや、障害があるとか、ないとかではなく、世の中、全ての人は、時には一人で頑張り、また時には、誰かと一緒に頑張るのです。一人で頑張ったと、思っていることも、実は、知らないところで、いろいろな人が一緒に寄り添って支えてくれていることにハッと気付くことがあります。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 運動会、楽しかったですね。朝、雨が降っていたけど、まもなく雨も止んで、練習した演技が全てできましたね。皆さんが、一生懸命練習した成果ですね。

でも、今年も、いろいろな大学のお兄さんやお姉さんが、運動会のお手伝いにきてくれましたね。綱引きの綱の出し入れや、得点板の係、テントの組み立てや片付けなどをしてくれましたね。そして、お家の方々はもちろん、卒業生や、近所の方々の応援もたくさんありましたね。

だから、今年も、運動会が楽しく無事に終わったのですよ。心の中で、「ありがとうございました」と言っておいて下さいね。

校長 柘植雅義

校長室便り5

「どうして、その子に、そのような指導をするのですか?」

 

 この問いは、とても重要です。

 

知的障害教育では、教師から、保護者から、研究者から、この問いが度々発せられます。問いの背景には、(1)その指導(指導内容も)がその子の実態(教育的ニーズ(educational needs))に合っているか、(2)その指導が効果の期待できるものか(科学的根拠(evidence)のある信頼できる方法か)、という思いがあります。「長年この指導をしてきたから」とか「この指導方法が好きだから」は理由にはなりません。このことは、家庭でも同様で、「家庭ではずっとこうしてきたから」も理由にはなりません。

 今まさに目の前の子どものことを考えて、最新の学術研究の成果も踏まえて、現時点での最適な指導方法(内容も)が選択できるかどうかがポイントです。特別支援教育の理念や基本的な考えも、そこにあります。

 

 附属大塚では、授業研究会の他、教職員向けの校内研修の機会が年に何回もあります。先日の研修会のテーマは「研究の進め方・楽しみ方 ~ルールとマナー~」、講師は私。学校内で研究をすることの意義、作法(方法)、倫理的配慮、成果の公表など一通り。参考図書は、研究の進め方に関する最近の国内外の専門書、10冊ほど。そして、今回の研修は、正にその問いに深く関わることでした。

 

 附属大塚の子どもたちへ

 毎日の勉強、楽しいでしょう。でも、分からない勉強があったら、担任の先生に「分かりません」と言ってくださいね。きっと、分かるように教えてくれますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り4

3色のボタン

 

 先日、小学部5~6年生の教室「そら組」に行くと、給食準備の真っ只中。ふとある子のエプロンを見ると、ボタンを入れるボタン穴の周囲が、それぞれ赤、青、黄色の色別に縫ってあり、それぞれのボタンを縫う糸の色も同じ赤、青、黄色でした。同じ色どうし対応(マッチング)できるようにとの「合理的配慮」。

それに気づいて、「○○さん、ボタン、赤、青、黄だね。」とその子に話しかけると、何やら嬉しそう。きっと、担任の先生からのアドバイスを踏まえて、保護者が我が子のことを思い、そのように縫い直したのでしょう。

 

 すると、そのような私とその子とのやりとりに気づいた教員が近くに来て、そのようにしていることの目的、保護者の理解と協力、それによる子供のボタンはめのスキルの獲得、そのようなスキルが獲得され定着したらどのようにそのような援助を減らしていくか(フェイドアウト)などを分かり易く私に教えてくれました。

その教員は、授業中、私がその教室に行くたびに、その時の授業やそれぞれの子の指導について、その目的や、なぜその子にそのような指導を行っているかなどを分かり易く教えてくれます。

私は、その教員からの説明が、いつも楽しみです。

 

附属大塚では、どの学部に行っても、誰かが、授業を見ている私の傍に来て、その授業のことを分かりやすく教えてくれることが多いです。上手く行っていること、そして、もっと良い授業にするためにこんなことを考えています、などなど。

だから、どの教室に行くのも、ワクワクします。

校長 柘植雅義

校長室便り3

反復横跳び

 

 体育主任の「始め!」の合図に、3名の生徒が順に、床に1メートル間隔に引かれた3本の線を両足で足早に順に跨いでいきます。教員は近くで見ていて、線を跨ぐ回数を数えていきます。敏捷性を測る種目です。

 決められた時間が来ると、「止め!」の合図で、次の3名に交代します。すると、スタートの合図の前に、「先生方、今度は生徒の前で一緒に跳んでください。」と、体育主任から教師に伝えられます。さらに次には、「(子どもの)手を取って一緒に跳んでも良いです。」。

 つまり、生徒一人一人の実態に応じた支援の在り方が工夫され、それが次々と他の教員に発せられていきます。

 知的障害教育では、生徒が全く一人でできることも大切ですが、どのようなことを、どのような支援によって、どこまでできるか、どのようにできるか、ということも実はとても大切なことです。

 

体育館の向こう側では、両足跳びの測定。知的障害のある子にとって、両足跳びも難しい種目です。しかし、何とか両足で跳べるように、あるいは、片足で大きく前に足を出せるようにと、教師の工夫された言葉かけが続きます。そして、やはり、その言葉かけは、生徒一人一人皆違います。

 

 4月は、この運動テスト(スポーツテスト)の他、健康診断(身体測定)や、歯科医らによる歯の健康指導等があります。そして、幼稚部や小学部1年生では新入生の給食指導が本格的に開始しますが、その前には全校幼児児童生徒の食物アレルギー調査が行われます。このように、4月当初は、運動や、健康や、食に関する大切な内容が続きます。

 そして、これらが一段落すると、いよいよ5月の運動会に向けて練習が始まります。

 

校長 柘植雅義 

校長室便り2

世界ダウン症の日

 

 毎年321日は、国連が定めた世界ダウン症の日です。1886年にダウン症についての考察を初めて発表したイギリスの医師であるダウン博士の名前に因んでいます。近年、この日になると、日本ダウン症協会の主催によるいろいろな催しが全国各地で開かれるようになってきました。

一方、42日は、国連が定めた世界自閉症啓発デーです。近年、全国各地で様々な催しが開かれるようになってきました。42日の東京タワー等国内外のタワーのブルーライト点灯、ブルーカーパレード、厚生労働省と日本自閉症協会の主催によるシンポジウムなど多彩です。

 さらに、4月の始めの1週間は発達障害者週間、12月の1週間は障害者週間と、障害のある方の理解と啓発を進める機会が増えてきています。

 

 このダウン症とか自閉症という障害、さらに広く知的障害とか発達障害とかの障害は、他の障害と比べて、なかなか分かりづらく、なかなか理解されにくく、それゆえ、場合によっては、学校や地域や職場において、誤解や偏見や差別に発展しやすいかも知れません。

 先日の42日、都心でのブルーカーパレードの直中、沿道から、列をなす車に貼られたステッカーを見て、「Autismって何?」とか、「自閉症啓発デーだから・・・」とか、「どうして皆ブルーなの?」、等の声が多数発せられたことと思います。

国連が定めた日、それを踏まえた日本におけるこのような催しの数々は、やはり理解啓発には絶大な力があるのだろうと、改めて実感しました。

 

 最後に、ダウン症の日は321日ですが、なぜ321日なのでしょうか?

校長 柘植雅義

校長室便り1

世界最高水準

 

 以前、兵庫教育大学に勤務していた時、現職派遣の大学院生の特別支援教育に関する授業で、引率して京都府立医科大学附属病院NICU(新生児集中治療室)に出かけました。

 病院の一般外来の入り口に入ってすぐ、あることに気が付きました。「我が病院は、世界最高水準の医療の提供を目指します。」というようなことが書かれたプレートが壁に貼ってあったのです。しかも、一か所ではなく、あちこち目立つ所に。

 患者や家族にとって、そのプレートは何と心強いことでしょう。いろいろな病気を抱え、藁をもすがる思いでやっと辿りついたその病院で目にするそのメッセージは何にも代えがたい支えでしょう。

 また、病院で働く医師や看護師、その他の専門職、事務職員等にとっても重要です。彼らは、そのような高い志を掲げた職場で働くことの心地よさを感じ、さらなる向上心を湧き上がらせることでしょう。

 その病院が、本当に今まさに世界最高水準の医療を提供できているか、あるいは、近い将来提供できるかどうかは、私は医療の専門家ではないので分かりません。しかし、そのようなことを高く標榜すること、そして、それに向かって、職員一人一人や組織が動き始めること、それがとても大切なことだと思います。

 

 私は、ちょうど1年前の4月、本校に着任直後から、いろいろな機会を通して、職員や保護者や校外の関係者の方々に、「附属大塚は、世界最高水準の知的障害教育を目指すことにしました。」と繰り返し発言してきました。

 

 本校の子供たちへ

 附属大塚の勉強、楽しいでしょう。それはね、皆さんの先生方が、皆さんと同じくらいたくさん勉強しているからですよ。それから、もっと勉強したいことがあったら、担任の先生に教えてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

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