校長室便り

平成28年度 校長室便り

附属大塚の体育館でスピーチ
附属大塚の体育館でスピーチ

 

柘植雅義

 

筑波大学附属大塚特別支援学校校長

 

筑波大学教授(人間系 障害科学域)

校長室便り25

 

「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

(2017年3月15日 卒業式 校長挨拶から)

 

 卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんがこんなに立派になって、また少し大人に近づいてくれたことがとても嬉しいです。

 

 今から3つのお話をします。「感謝」ということ、「夢」ということ、そして、お家の人へのお話しです。

 

 まず一つ目は「感謝」です。卒業生の皆さんは、附属大塚での勉強や運動や行事、楽しかったでしょう。それは、皆さんが、いつも友達と仲良くし、先生方の話をよく聞き、皆さんが一所懸命に頑張ったからです。それから、先生方が、皆さん一人一人のことを大切に思って、皆さんにいろいろ教えてくれたからです。そして、何と言っても、皆さんのお家の人が、そんな皆さんを助けてくれていたからです。だから、先生やお家の人に「ありがとう!」と心の中で言っておいてくださいね。

 

 次に二つ目は「夢」です。校長先生から皆さんにプレゼントがあります。とても良いプレゼントです。それは、校長先生が皆さんの様に子供の頃、卒業式で、その時の校長先生が皆にプレゼントしてくれた言葉です。

 その言葉を言います。

 「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

 もう一度言います。

 「かたつむり ゆっくりのぼれ 富士の山」

 小さな“かたつむり”が、日本一高い富士山に登るのは大変です。でも、夢に向かって、登るぞという気持ちを持って、ゆっくりゆっくり進んでいくと、きっと上の方まで行けると思いますよ。そして、附属大塚は、そんな皆さんをこれからもずっと応援していきます。

 

 三つ目のお話しは、お家の人にしますので、皆さんは少し待っていてください。

保護者の皆様にお礼を申し上げます。本日はお子様のご卒業、真におめでとうございます。本日このように子供たちが卒業を迎えられたことは、皆様方の日頃の、附属大塚の教育への深いご理解と様々なご協力の賜物と感謝しております。

 子供たちは、4月からそれぞれの進路に向かって新たなチャレンジを始めます。その道のりは、とても楽しく、きっと明るいものと信じています。しかし、途中、大きな困難にぶつかるかも知れません。どうぞ、未来に向けてたくましく自立していくお子さんに、これまでと同じ様に暖かく寄り添って見守ってあげていってください。

 

 これで、お祝いの挨拶といたします。卒業生の皆さん、卒業おめでとう。

校長 柘植雅義

校長室便り24

 

練習

 

 練習(れんしゅう)って、何やらとても素敵な言葉ですね。

 

 心理学的には、練習(practice)は、精神的あるいは身体的な作業・活動の望ましい方向への変容(時間の短縮とか質の向上とか、さらには、自分自身の満足感とか達成感とか)を目的として、その作業や活動を反復することと定義されることが多いです。ですから、練習には、作業や活動を反復して行う側面と、その結果として作業や活動が望ましい方向へ変容していく側面とがあり、前者を「練習活動」、後者を「練習効果」と言います。そして、それらの関係を、「プレ(pre)-ポスト(post)」で比較して、効果を吟味します。

 

 さて、知的障害のある子どもの日々の練習は、特に重要な意味を持ちます。すぐにはできるようにはならないかもしれないけど、一人で、あるいは、誰かと一緒に、さらには、誰かから手取り足取り教えてもらいながら、もしかしたら何か特別な道具(支援機器等)を使って。そして、練習を繰り返して、少しでも目標に近づけた時、目標を達成できた時、本人はもちろんのこと、教師も、保護者も、周りの人々も、嬉しくなります。そして、皆を幸せな気持ちにさせます。

 

 ですから、練習しても練習しても効果が確認できなければ、その方法や内容を変えることになります。いったん立ち止まって、振り返って、本人のことを再度深く知り、そして、新たな練習を始めるのです。このことは、知的障害教育に携わる教師としての専門性の中核の部分です。

 

本校の子どもたちへ

 卒業式の練習が始まりましたね。卒業証書の受け取りも、呼びかけ(語り掛け)も、「ありがとう さようなら」の合唱も、皆、少しずつ少しずつ上手になってきていますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り23

人は支えられて成長する

 

 人は、子どもも、大人も、障害があろうとなかろうと、残念ながら一人では豊かに成長していくことはできません。いろいろな人から見守られ、褒められて、励まされて、そして、時には多大な応援を受けながら、豊かに成長していくのです。(2015年度 校長室便り6「一人で頑張ること 誰かと一緒に頑張ること」(春の運動会))

 

 附属大塚は、国内外からの来客がとても多いです。幼稚部、小学部、中学部、高等部、そして、支援部と案内をしている最中に、あるいは、一通りの案内の後、いろいろな感想やら意見を投げかけられます。授業を参観した保護者から、あるいは、運動会や大塚祭などに参加した別の学校の関係者や地域の人からも。

 「あ、やっぱり、このことを褒めてもらえた」と嬉しくなることもあれば、「もっと、こうすれば良いのに」とか「どうして、そうしているの?(それは、止めた方が良い)」という声にハッと気づかされ、附属大塚をさらに魅力的な学校にしていくヒントとなることもあります。

さらに、教員が、他の教員の授業や指導の実際を見合って、教え合って、学び合う「授業研究会」という仕掛けも重要です。

 

本校の子どもたちへ

 附属大塚の勉強、楽しいでしょう。皆、いつも、一生懸命、勉強していますね。でも分からないことや、上手くできないことがあったら、そのことを先生に教えてあげてくださいね。そうしたら、皆の先生は、きっと、もっと分かるように教えてくれると思いますよ。良かったね。

校長 柘植雅義

校長室便り22

地域の人から声をかけていただくということ

 

 附属大塚の勤務の時、朝、子どもたちの登校の様子を門のところで警備員の方と見守っていると、地域の人から声をかけられることがあります。

 

 先日、雪が混じったような小雨がちらついたとても寒い日の朝、子犬を連れた年配の人から、門のところで話しかけられました。「ここの先生ですか?」「何十年もこの辺りに住んでいるけど、昔は、近所の子どもたちが、放課後にこの学校の遊具や運動場で遊んでいたけど、今もそうなの? そこの校庭の下を走っている地下鉄(丸の内線のこと)は、昔は、よく見えたり音が聞こえたりしていたけど、今もそうなの?・・・」 

 

 通勤途中、犬の散歩、ゴミ出し・・・、いつも、どなたも、ほんの短い時間で、たわいのないような言葉のやり取りかもしれないですが、学校の前で立ち止まってくださり声をかけていただけるということ、何と幸せな学校でしょう。

 

 障害のある子どもを育てるとともに、障害があろうとなかろうと全ての人々が人権を大切にされ共に幸せに暮らしていける社会(『共生社会』(内閣府))を育てていくのも、本校の大切な使命です。(校長室便り20「教育憲章」:5つ目「共生社会の実現にむけ貢献します」)

 

本校の子どもたちへ

 学校の外に出て、買い物の勉強に出かけたり、郵便局に貯金の勉強に行ったりしますね。バスに乗って出かけることもありますね。皆が町で一生懸命に勉強しているところを、大人の人が見てくれていますよ。皆でもっと楽しい町を作っていきましょうね。(校長室便り20「教育憲章」:子ども向けの5つ目「皆でもっと楽しい町を作っていきましょう」)

校長 柘植雅義

校長室便り21

仲良く

 

 遠い昔、学生の頃、初めての心理学の講義で、机上に置かれた高さの違う3つの山の模型を、自分の向こう側に座っている人からはどのように見えるか? 右や左で90度横を向いて座っている人からはどのように見えるか? 絵を描いて下さい、という問いをその講義の教授から投げかけられました。心理学って、まさに自己や他者の心を探る学問なんだ、と改めて感動した瞬間でした。(スイスの心理学者ピアジェの『3つの山の問題』)

 

 その後、心を探る研究は世界中で飛躍的に進み、ヒトや類人猿等の心に関する事柄や種々のメカニズムが解明されてきました。例えば、近年、ヒトや類人猿等が、他者の心の状態や、何某かの行動の目的・意図、さらには、知識や信念や疑念などを察する心の機能の解明が飛躍的に進みました。(『心の理論』(Theory of Mind))

 

 先日、3学期の始業式で、全校の子どもたちに3つの話をしました。楽しかった冬休みのこと、夢を描くことの大切さ、そして、3学期に頑張ること。3学期は、とても寒いけど、「健康で、元気に、楽しく、仲良く」頑張ろうと話しました。特に、「仲良く」も大事だということを繰り返し強調して話しました。

 実は、子どもも大人も、障害があろうとなかろうと、この「仲良く」ということは、学んだり働いたり生活したりしていく時に非常に重要な視点(仕掛け)なのだと思います。それは、いつも自然に構築されていくものではなく、皆が、相手の置かれた状況やまさに心の状況を察しながら、自分の言動や行動をうまい具合に相手に投げかけていく(努力していく)ことがポイントとなるでしょう。

 そして、知的障害のある子に「仲良く」ということの意味やそれも踏まえての言動や行動をどのように育てていくのか。もしかしたら、知的障害教育の最も大切な教育目標の一つなのかもしれません。

 

本校の子どもたちへ

 3学期も、たくさん勉強して運動しましょうね。給食も、掃除も、登下校も。そして、何をするときも、いつも、いろいろな友達と仲良くできる子は、カッコいいですよ。

校長 柘植雅義

校長室便り20

教育憲章

 

 本校では、教育憲章を掲げ、教育に取り組んでいます。

 

          教育憲章

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本校は、世界最高水準の知的障害教育を目指します。

そのために、以下の5つに全力で取り組んでいきます。

 ○子供の主体性を大切にします

 ○子供の人権を大切にします

 ○学術研究に基づく確かな指導・支援を行います

 ○成果を国内外に広く発信します

 ○共生社会の実現にむけ貢献します

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     筑波大学附属大塚特別支援学校 2016年4月

 

本校の子どもたちへ

 2016年の1年間、いかがでしたか。2017年、また新たな1年間の始まりですね。

 これからの1年間も、次の5つのことを大切にしていきましょう。

  ○自分がしたいことを大切にしましょう。

  ○皆のことを大切にしましょう。

  ○いろいろなことをたくさん勉強しましょう。

  ○勉強していることを日本や世界の人たちに教えてあげましょう。

  ○皆でもっと楽しい町を作っていきましょう。

校長 柘植雅義

校長室便り19

枯葉を拾う

 

 秋から急に冬らしくなり、木々の紅葉がきれいになってきたと思っていたら、じっくりと楽しむ間もなく落葉が始まりました。附属大塚は、東京ドームのすぐ近く都心の真ん中にあるとてもコンパクトな学校なのですが、実は木々の豊かな学校で、毎日毎日きれいに色づいた枯葉が落ちてきます。美しいです。

 でも、校舎を美しく保つために、子どもが走って枯葉に足を取られて滑って転ばないようにと、職員が枯葉を集めます。日によっては、かなりの量になります。そして、子どもが登校する頃には、きれいに清掃されています。でも、その矢先に風に吹かれてまた1枚2枚と葉が落ちてきます。そのような中、登校が始まります。

 

 近年、気候の大きな変動なのか、台風などで急な大雨が降ることがあります。一部低くなってしまっている校舎に雨が入り込まないよう、教員や職員がいくつもの土嚢を積みます。雨が急に振り出したりしたら、大雨の中の作業となります。

 また、昨年、一昨年と、東京や横浜で、まとまった雪が降りました。夜中に降って、積もったり凍結したりする時には、職員や教員がいつもより早く出勤し、大通りから学校の校門まで、そして、校門から靴箱のある玄関までの雪かきをします。

 

 人は、時に、「自分一人でできた、誰からも支えられずに、私って凄いだろう」、という気持ちになる時があります。その一方で、自分一人で頑張ったからできた、と思っていたら、実はその背景に、いろいろな人々からの支えや気遣いがあることに、ふと気が付くことがあります。世の中って、そういうものなのですね。そんなこと、子どもの頃には分からなくても、大人になると皆分かってきます。人々が、共に学び、共に暮らし、共に働いていくにはとても大切なこと。

 

 知的障害のある子どもたちに、そんなふうに世の中が出来上がっているということをどのように教えていったらよいのかという問い。先日の朝、枯葉を詰めた大きなビニール袋を職員がいくつも運んでいるのを見て、また思い出しました。(2015年 校長室便り22 雪)

校長 柘植雅義

校長室便り18

「ぼくのゆめ わたしのゆめ みんなのゆめ」

 

 知的障害教育における指導法や支援方略に関する、教育学的・心理学的な学術研究の蓄積は非常に多く、さらに日々進化中であることが、毎年開催される種々の学術学会に参加すると分かります。しかしながら、まだまだその蓄積が不十分な領域もたくさんあります。

 

 知的障害のある子どもが、高校生はもちろんのこと、中学生や小学生のうちから、将来の夢を語ること、そして、その夢を叶えるために、具体的な準備を進めていくことはとても重要です。近年の我が国や世界的な動向を踏まえると、これからの時代、そのようなことはますます重要になっていくことでしょう。

 

 しかしながら、知的障害のある子どもに夢の大切さや必要性(良さ)をどう教えるか、そして、どのように描くか(いろいろな要因が重なり非常に難しい)、その実現に向けてどのような具体的な取り組みをしていくのか(スケジュールも含めて考えるとこれも非常に難しい)、という一連の事項に関する学術研究がほとんど無いのです。さらに、検証の在り方もとても複雑でしょう。

 

 11月のある日、中学部の教室に行くと、生徒たちが全校の子どもたちに行った夢に関する質問紙調査の結果をまとめているところでした(質的分析の手法で良く知られたKJ法((川喜田二郎法)のような方法で)。その結果の一部は、11月の大塚際や、先日の合同朝会などで発表されました。「ぼくのゆめ わたしのゆめ みんなのゆめ」と題して、中学部ではこの一連の勉強を継続してきています。皆の夢を集めて整理して考えてみたら、自分の夢がどのように変化したのでしょう。

 

 そういえば、筑波大学を卒業して、海外のコーヒーチェーンを日本の国内で全国展開すべく尽力した初代の社長の書いた本を思い出しました。採用面接試験で必ず聞くという問いがあると書いてあります。・・・・・「あなたの夢と目標を教えてください。」 受験者は、この問いを面接試験で受けて、「夢」と「目標」が別のものであることに改めて気付かされ、そして、夢の実現に向けてどのような目標(しかも行動目標)を掲げてどのように尽力しているか、について語ることになるのです。

 

本校の子どもたちへ

 「ゆめ(夢)は、かなえる(叶える)ものなんだ」というフレーズ、校長先生は大好きです。期待してじっと待っているのではなく、自分から手をあげて、声をだして、行動して、努力していくこと、・・・そういうことをしていくと、きっと夢は叶いますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り17

12月にもかかわらず良く晴れた暖かい日に

 

 朝、登校してくる子どもたちは薄着でした。マスクをつけている子も少なかったです。

 

 月曜日ということで、体育館で合同朝会。「校長先生のお話」、「12月のお誕生会」、の後、今週、JICAから研修生(アフリカと大洋州から、教員、研究者、教育省の担当者ら)10数名が附属大塚を訪問することから、その予習が始まりました。国の名前、旗、どの国からのお客様が自分の教室に来てくれて一緒に昼食を楽しむか、など。

 

 幼稚部は、ちょうどこの穏やかな日の午前中、近くの公園へ歩いて出かけました。昼前に帰ってきて給食。その日の附属大塚の給食はロシア料理。ご飯に肉料理がかけてあるメインディッシュとポテトとロシアンティー(ジャム付き)など。

 

 小学部の5~6年生(そら組)は、歩いて近くの郵便局へ。皆で作る年賀状に貼る切手を買うために。番号が呼ばれると番号札を持った子どもが、先生と一緒に窓口へ向かいました。知的障害のある子が、番号札を持って窓口に来て、先生と一緒に切手を注文して、・・・・・駅のすぐ前ということもあり、また年末ということで大混雑にもかかわらず、他のお客さんと同じように適切な対応を受けました。

 そういえば、何か月か前に、中学部の生徒たちが、積立貯金のために、一人一人の通帳を持って、やはりその郵便局に行ったときも、当たり前のように適切な対応を窓口の方がされていたのを良く覚えています。

 障害があってもなくても、子どもでも大人でも、全ての人が街の施設を上手い具合に利用できるようにと、障害者差別解消法が施行されて半年が経ち、街がまた一つ成熟していっているように感じました。

 

 中学部は、体育館でグループ活動の発表会の練習。鉄道グループのある生徒は、そのために、週末、家族と少し遠いところにある駅舎と電車を調査に出かけた際の調査結果を報告する練習をしていました。駅舎の写真とか、時刻表とか。

 

 高等部のある部屋では、「国際理解学習」の振り返りが行われていました。各班から2名ずつが代表で集まり、今日の学習の成果と今後の課題、解決方法を考えていました(「編集会議」)。担当の教員に上手い具合に誘導されて(的確な支援を受けて)、豊かなディスカッションが続いていきました。ふと、「私たちのことを、私たち抜きで決めないで」っていうあの有名な歴史的なフレーズを思い出しました。

 

本校の子どもたちへ

 この前の、ロシアの給食、とてもおいしかったですね。大塚では、いろいろな国のことをたくさん勉強していますね。こんど、またいろいろな国からたくさんのおきゃくさまが大塚に来てくれます。大塚で勉強していること、楽しいこと、友だちのことや先生のこと、たくさんのことをお話ししてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

校長室便り16

リハーサル:大塚祭のステージ発表

 

 リハーサル(予行練習)。何と素敵な言葉でしょう。大きな目標に向かって、皆で力を合わせて取り組んで来た途中段階やいよいよ最終段階で、一度他の人に見てもらって、いろいろな声をもらって、アドバイスをもらって、本番に向けた総仕上げの作業、最終調整が始まるのです。

 

 大塚祭のリハーサルがありました。それを見て2つのことを思いました。

 子どもの主体性を大切にした教育を行うこと。これは、本校の教育目標の一つです。教師が、前面に出て、子どもたちをぐいぐい引っ張っていくのではなく、どの子も自らの意思で自立して取り組んでいる様子が、このリハーサルでも随所に見られました。

 それから、幼稚部も、小学部も、中学部も、高等部も、それぞれの発表が、各学部の「年齢や発達の段階」に即した「構成(ストーリー)」になっていました。どの学部も、その両者のマッチングの見事なこと見事なこと。

 

 そして、全ての子どもたち(皆が主役)、黒子となって彼らを下支えする教師たち、そして、子どもたちと教師たちが織りなす絶妙な関係性に気付き、演技力に感動し、その輪の中に思わず入り込んで行きそうな気持ちになる参観者たち。何やら不思議な感覚の数時間でした。

 

本校の子どもたちへ

 リハーサルは、既に100点でしたよ。良かった。もう少し練習したら本番は110点かな。そのために、健康に注意して、食事や睡眠に注意して、過ごしましょう。

校長 柘植雅義

校長室便り15

「紅葉」と「人権」と「消防車」

 

 「秋の夕日に 照る山紅葉(もみじ) 濃いも薄いも 数ある中に・・・」(1991年(明治44年)唱歌:高野辰之作詞、岡野貞一作曲)。先日の月曜日の合同朝会、体育館に素敵な輪唱が響きました。2人の先生のお手本の後で、小学部と中学部の児童生徒が先に歌い始め、高等部の生徒が追いかけて歌っていきました。

 

 その前の“校長先生のお話し”で、人権の話をしました。食べること、トイレに行くこと、眠ることは、誰からも邪魔されない、人に与えられた基本的人権であるということ。そして、自分を大切にすること、友達を大切にすること、生き物を大切にすること。それから、友達を大切にすることのいくつかの具体例。最後に、皆さんの人権は法律で守られているので安心してください、ということ。

 

 さらにその前には、毎年恒例、消防車の写生会に描いた絵の、消防署長賞などの表彰式。何人かの児童生徒が、カッコいい制服を着た消防士さんから表彰状をもらいました。写真撮影のためにカメラを持って近づいた担任の先生方に、満面の笑顔を浮かべて表彰状を持ってポーズをとる子もいました。頑張ったら、褒めてもらえるということ、やっぱり嬉しいですね。

 

本校の子どもたちへ

 この前の合同朝会で、皆で「もみじ」と「じんけん」と「しょうぼうしゃ」の勉強をしましたね。もみじの歌は、今度、大塚祭で合唱する歌ですね。皆と一緒に好きな歌を楽しく歌うこと、それから、頑張ったら誰もが皆から褒めてもらえるということ、どちらも当たり前のことだけど、とても大切なことなのですよ。

校長 柘植雅義

校長室便り14

こまめに褒めること まとめて褒めること

 

 先日の金曜日、良く晴れた秋らしい日、幼稚部は上野動物園へ親子遠足、小学部は附属小学校と芋掘りへ。中学部のある教室では、教育実習生が研究授業の準備として、宮沢賢治の作を参考にした沖縄の料理店の創作劇の練習、また別の教室では、「(将来の自分の)夢」の勉強。さらに、高等部の音楽の授業を覗いてみると、輪唱が聞こえてきました「秋の夕日に照る山もみじ 濃いも薄いも数ある中に・・・」(「紅葉(もみじ)」(作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一))。輪唱を支援する最新の音楽ソフト(自分のパートをPC上で教えてくれる)を使って。

 その週の水曜日には、海外からIOC(国際オリンピック委員会)の一行が本校を訪問し、附属坂戸高校との合同のオリ・パラ学習の様子を見学されました。委員の方々から、たくさんのお褒めの言葉をいただきました。

 何やら、附属大塚は、勉強の秋、スポーツの秋、そして、実りの秋の真っ只中。

 

 さて、知的障害教育では、子どもたちをこまめに褒めることが非常に大切です。どのタイミングでどのように褒めると良いか効果的か、がポイントです。言葉で褒める、微笑んでみる、OKの合図を送る、あるいは、シールを貼ってあげて、・・・。状況によっても、子どもの実態によっても異なります。一人一人違うのです。

 そしてまた、その都度こまめに褒めるのではなく、ある程度まとめて褒めることも大切です。今日は頑張ったね、2学期は頑張ったね、1年間頑張ったね・・・。

 実は、近年、知的障害のある子どもにどのように褒めると良いか効果的か、という学術研究の蓄積がかなり進んできました。「叱る」ことを極力減らしていく工夫も提案されています。

 

 子どもたちをどのように褒めていくか、さらには、子ども同士で褒めあう関係性をどのように育てていくか、知的障害教育に携わる者の腕の見せ所です。

 

本校の子どもたちへ

 幼稚部の皆さん、上野動物園、楽しかったですか? いろいろな動物に、手を振ったり、声をかけてあげたりしましたか? 皆さんからのそんな応援に、動物たちも嬉しかったと思いますよ。

 小学部の皆さん、たくさんの芋が掘れましたか? 附属小学校の友達と一緒に活動したこと、きっと、附属小の友達も嬉しかったと思いますよ。

校長 柘植雅義

校長室便り13

「そろそろだね?」「まだかな?」「遅れているのかな?」「あ、来た来た!」

(かけがえのない命)

 

先日、夕方の羽田空港、沖縄への修学旅行からの帰りを待つ中学部3年生の保護者の方々。「そろそろだね?」「まだかな?」「遅れているのかな?」「あ、来た来た!」・・・、大切でかけがえのない我が子の帰りを待つ保護者の声。今年も、子どもも教員もお揃いの沖縄Tシャツを着て到着ゲートを出てきました。沖縄での様子、そして、子どもたちが頑張ったことを教員が保護者に話し始めました。

 

 そしてまた先日は、小学部の子どもたちが、この夏最後のプール学習に出かけました。温水プールでの様子を参観できる2階の待合室では、保護者の方々が我が子の練習の様子を、身を乗り出してじっと見つめていました。「うちの子、プールが嫌いだったのに、好きになりました。」「うちの子、泳ぎたいという気持ちになって、クロールを覚えました。」「うちの子、○○先生とマンツーマン(の指導)。」・・・。

 

 中央教育審議会で、2030年の日本を想定した、今後の教育の在り方について協議が進んでいます。会議の中で、私や何人かの委員が、多様性(ダイバシティー)の大切さを繰り返し発言しています。障害があるとかないとかではなく、全ての国民が、その人権を大切にされ、豊かに幸せに、お互いを支え合いながら過ごすことが当たり前の社会(『共生社会』(内閣府))の実現に向けて、附属大塚ができることは多いと思います。(2014 校長室便り20『きみのかわりはどこにもいない』)

校長 柘植雅義

(2016.10.4)

校長室便り12

附属大塚の教員は毎年なぜ学術学会で積極的に研究発表するのか

(附属大塚の使命)

 

 9月、新潟で開催された特別支援教育に関する全国規模の学術学会の年次大会に参加しました。附属大塚のたくさんの教員が、日々の教育実践からまとめられた多くの研究を発表していました。研究成果をポスターにまとめて発表する会場では、附属大塚の研究を発表する教員のブースにはどこも大勢が集まっていました。また、附属大塚の教員が関わるシンポジウムは、どこに行っても会場が満員。

 

 先日、本校の複数の教員の実践研究が、海外で刊行された専門書に掲載されました(英語)。このようなことは、近年、もう既に何度も繰り返されてきています。

 

 附属大塚は、世界最高水準の知的障害教育を目指しています(2015 校長室便り1『世界最高水準』)。ですから、蓄積された知見を国内外に広く発信することは、本校の大切な使命です。

 

本校の子どもたちへ

 校内で、皆で育てている野菜の成長の記録を書いていますね。また、この前は、皆さんの将来の夢についてのアンケートを校内でとりましたね。記録を書いたり、アンケートをとったりすること、楽しいですね。どちらも、結果がまとまったら、また、廊下に掲示したり、大塚祭(文化祭・学習発表会)で発表したりしてくださいね。

校長 柘植雅義

(2016.10.4)

校長室便り11

 「校長先生、ドッチボールを一緒にしませんか?」とは言えなくても

 

 先日、給食後の昼休みに体育館に行くと、中学部と高等部の生徒たちがドッチボールとかフラフープとか鬼ごっことかを思い思いにしていました。すると、ある生徒が私の方に近づいて来て、「エイ!」と言って私の方を見てドッチボールを投げてきました。ボールをつかんでその子の方に転がすと、上手につかんでまた私の方に投げました。何度かお互いに投げたり転がしたりしました。しばらくして、ちょうどその日に来ていた教育実習生に代わってもらいました。今度は、その生徒と実習生がドッチボールを始めました。

 

 言葉で「校長先生、ドッチボールを一緒にしませんか?」とは言えなくても、私の方を見てボールを投げることでその意図は伝わります。たとえ言葉で言えなくても、知的障害のある子どもが相手に何を伝えようとしているのかを推察し、それに応えていくことはとても大切です。この4月に施行された障害者差別解消法では、合理的配慮が必要である旨を障害のある本人が周りの人に言わなくとも(「意思の表明」ができなくても)、周りにいる人がその状況から適切に読み取って代弁していくことが大切だと言われています。知的障害教育に携わる人の最も重要な専門性の一つでしょう。

(参考:2015年 校長室便り24「サッカーゴールの前で「大」の字になって(意思の表明)」)

 

 下校の時間、ちょうど我が子を迎えに来ていらしたその生徒の保護者に、昼休みのドッチボールの様子を伝えると、校長先生や初めての実習生の人ともドッチボールができたのですね、と我が子の頑張りにとても嬉しそう。

 

本校の子どもたちへ

 中学部や高等部の皆さん、今度は、幼稚部や小学部の子らにドッチボールとかフラフープとか鬼ごっことか、いろいろ教えてあげてくださいね。

校長 柘植雅義

(2016.9.9)

校長室便り10

引き渡し訓練/引き取り訓練

(2016年9月1日 2学期始業式 校長挨拶)

 

 皆さん、おはようございます。2学期の始業式です。皆さん、元気でしたか。今から、3つのお話をします。夏休みのこと、防災のこと、そして、2学期のことです。

 

 一つ目、夏休みのことです。皆さん、夏休み、楽しかったですか? お家でゆっくりしましたか? 美味しいもの、たくさん食べましたか? バスや電車に乗って、もしかしたら、新幹線や船や飛行機に乗って、旅行した人もいるかな? 来週の月曜日の合同朝会のときに、夏休みで一番楽しかったこと、皆さんに聞きますね。

 

 二つ目、防災ということです。防災という言葉、難しいですね。でも、とても大切な言葉なので覚えましょう。夏休みに、大きな台風が2つ来ました。風が強く、雨もたくさん降りました。それから、地震が来たところもありました。ちょっと心配ですね、ちょっと怖いですね。でも、大丈夫ですよ。皆さんが附属大塚にいるときは、先生方の話を良く聞いて、非難しましょう。今日は、引き渡し訓練/引き取り訓練です。お家の人が迎えに来てくれるので、一緒に帰りましょう。

 

 三つ目、2学期のことです。9月は暑いけど、だんだん涼しくなって、12月には寒くなりますよ。中学部や高等部の皆さんは修学旅行に行きますね。2020東京オリ・パラの勉強も楽しみですね。それから、秋になると大塚祭、今年も、この体育館のステージで、皆で歌ったり劇をしたりするのかな。

 

 それでは2学期も、楽しく勉強したり運動したりしましょう。

校長 柘植雅義

校長室便り9

夏の思い出

 

 夏休みになった頃、本校の職員が、教室前の廊下を、機材を使って本格的なワックス掛けをしていました。
 この夏休み期間中に、本校主催の公開講座が3つ、公開研修会が1つ開かれました。ある講座を覗いてみると、会場が全国各地からの参加者で超満員。皆、本校の職員の熱い講義を熱心に聴いていました。
 ある日、校内を巡っていると、ある学部では大勢がそろっていて何やら仕事の真っ只中。1学期の振り返りでしょうか、それとも2学期の構想でしょうか。
 また別の日、ある部屋では、大きな机上に、授業で子どもたちが使うタブレット端末が何十台も置かれていました。そこで、2人の職員が話し合い。メインテナンスでしょうか、2学期に向けての準備でしょうか。
 そして、台風が関東に上陸した日、近づきつつある台風による土砂降りの雨に備えて、朝早くから、何人かの職員が1階校舎への雨水の侵入を防ぐために、土嚢を積みました。近年の、年に数回ほどの集中豪雨等に備える大切な作業です。
 また、8月の後半には、いくつかの学部による、他の附属学校等と交流及び共同学習が続きます。2学期が始まる前の助走です。
 さらには、8月の下旬になっても、本校の何人かの職員が、筑波大学で開催される教員免許状更新講習の講師として附属大塚の実践を紹介します。

 

本校の子どもたちへ
 夏休み、楽しんでいますか? 夏の思い出ができましたか? 9月になったら、皆、元気に附属大塚に戻って来てくださいね。そして、楽しかったこと、いろいろ教えてください。先生方、待っていますよ。

校長 柘植雅義

(2016.8)

 

校長室便り8

“Diversity in Harmony: Insights from Psychology”

31th International Congress of Psychology (ICP) 2016 Yokohama, Japan

 

In this July, international psychology meeting (ICP) was held in Yokohama for one week. The psychologist who participated was 7000-8000 people from all over the world. The first was held in Paris in 1889. At that time, Wundt, Galton, Binet, Freud, James, Durkheim, and others 100 participated. They were the psychologists who pulled psychology at the time. Once in four years, it has been held afterwards.

 

This Congress Theme was "Diversity in Harmony Insights from Psychology". I was invited to a lecture in the framework of "Educational and School Psychology". My lecture theme was "Diversity of Learning in Classroom and Role of Psychology in Japan The history, the present situation, and the prospects" (Public Lecture).

 

In the modern society of today's all the countries of the world, this "Diversity" became a more and more important keyword. In late years, in a classroom, in a school and in a community, diversification advanced really rapidly. In such a flow, the expectation for psychology will become bigger and bigger in future. And psychology will be to surely contribute to their learning and happiness for all people from a child to an adult and an elderly person.

 

Message to the children in Otsuka School

Do you enjoy the long summer vacation? Do you have any help (“Otetsudai”) for your family? If you continue to help (“Otetsudai”), you will become a very good feeling. And your family feels good, too. I believe that all people find happiness by doing so it after all!

Principal:  Masayoshi Tsuge

校長室便り7

1学期を終えて さあ夏休み

(2016年7月20日 終業式 校長挨拶から)

 

 皆さん、おはようございます。今日は、終業式です。4月、5月、6月、7月と、皆さん、頑張りましたね。附属大塚での勉強や運動、そしていろいろな行事、楽しかったですか? さあ夏休みです。バスや電車に乗ってお家の人と遠くに行くのかな? 新幹線や飛行機や船に乗る子もいるのかな?

 

今から、大事なことを3つお話します。良く聞いて下さいね。

 一つ目。健康です。夏休みは、毎日、とても暑いです。ご飯を良く食べて、夜になったらしっかり眠ってください。それから、お茶とか水とかをたくさん飲んでください。そうすると、きっと病気をしないと思いますよ。

 二つ目。ルールとマナーです。いつも、合同朝会でお話していますが、ルールとマナーを大切にする人はカッコいいです。立派でカッコいい大人になるために、ルールとマナーを大切にしましょう。

 三つ目。お手伝いです。今年も、夏休みには、お家でお手伝いをしましょう。ご飯や、洗濯や、掃除や、買い物とかを、お家の人が毎日してくれていますね。だから、今度は、皆さんがお手伝いをして、お家の人を助けてあげてください。(2015年 校長室便り12 夏休みのお手伝い)

 

 今お話した、健康、ルールとマナー、そして、お手伝い、この3つ、とても大事なことですから、夏休みに頑張りましょう。そして、夏が終わって9月になったら、また皆さん、元気良く附属大塚に来てくださいね。これで、校長先生のお話を終わります。それでは、皆さん、お元気で。

校長 柘植雅義

校長室便り6

プロフェッショナル

 

例えば、心臓外科医。患者の状況を的確に把握し、最先端の処置方法も踏まえて最善の対応方法を選択していく。手術の最中にも、状況の変化に伴い、大小様々な判断が強いられる。そして、手術が成功したかどうかは、手術直後の状態の改善はもちろんのこと、むしろ、その後の患者の長い人生をどこまで豊かにできたかによるという。さらに、自分がその患者の状況を確かに改善できるか、という当初の判断も重要だ。もし難しければ、他の医師や他の病院に思い切って託していき、できもしないのに深追いはしない。あるいは、チームで対応することも重要だ。(天野篤『あきらめない心』、浅田次郎『天国までの百マイル』)

 

 実は、このような考えや流れは、知的障害に関わる学校の教師にも基本的なものかもしれない。そして、それが確かに遂行できるかどうかが、プロかどうかの分かれ目なのだと思う。

 

 先日、本校で、外部の講師を招いての授業研究会が開催された。今回は、幼稚部と中学部。いつも、協議が進むと、結局は、「どうしてその子に、そのような指導をするのか? その指導は最良か? そして、どのような成果が見られたか?」という、教育の根源的な問と結びついていくことに気がつく。今回もそうだった。

 

 本校の子どもたちへ

 「がたん ごとん がたん ごとん ざぶん ざぶん」の絵本の勉強(幼稚部)、海外の食べ物や乗り物などを調べて発表する国際の勉強(中学部)、頑張りましたね。その朝の授業後、皆さんが下校した後、今度は皆さんの先生方が、お昼になっても、午後になっても、夕方になっても、ずっと皆で勉強していましたよ。

校長 柘植雅義

校長室便り5

ペイ・フォワード(未来に向けて払う?)

(「ちょうだい」「ありがとう」)

 

 知的障害のある子にとって、必要な物や事を相手に要求することは、学校や家庭や社会においてとても大切なことです。「ちょうだい」と言って伝えても良いし、文字カードや絵カードを提示するとか、最近では、携帯用端末とか音声ペンといったICT機器を使うということも可能な時代になってきました。さらに、相手の目を見て訴える、相手の手を引っ張っていく、ということも貴重です。このような意思の表明は、必要な「合理的配慮」を得るために、今後、ますます重要になっていきます。

 

 ずいぶん昔のこと、大学院の学生だった頃に、5~6人の院生チームで、知的障害のある子や、知的障害と自閉症を併せ有する子に、実験室で「ちょうだい」「ありがとう」の訓練(行動連鎖の形成と維持・般化)に取り組んだことがあります。「ちょうだい」は、比較的スムーズに獲得したのですが、「ありがとう」の訓練はとても難航しました。「ちょうだい」によって当初の要求が叶った後、「ありがとう」と発するのが難しいのです。「ありがとう」の機能は何なんだろう?と、何度も議論しました。

 

 さて、過去の善意(恩恵、つけ)に対して返済するという意味で「ペイ・バック」pay backという英語表現があります。一方、「ペイ・フォワード」pay forward(未来に向けて払う?)という言い回しは、英語的には存在しないようです。ある善意に対して「ありがとう」と言うことは、そのことへの感謝の意と、もしかしたら、いつかまた今度もそれを期待する表明(未来への保険?)ともなります。しかし、善意をくれた相手に「ありがとう」と言って返すだけでなく、もし、他の人々にも積極的にその善意を提供していったら、そして、この世の中の皆がそのようなこと(「ペイ・フォワード」)をしていったら・・・。(『ペイ・フォワード』キャサリン・ライアン・ハイド)

 

 本校の子どもたちへ

 先日、教室に行ったら、皆で、楽しそうに絵を描いていましたね。途中まで描いた絵を先生に見てもらって、アドバイスをもらって、「ありがとう」と言っている子がいました。今度、絵が思うように描けないで困っている友達がいたら、(先生と一緒に)その子に描き方を教えてあげて下さいね。そうすると、皆で教えたり教えられたりということがもっと増えていくかもしれませんよ。

校長 柘植雅義

校長室便り4

引き継いでいくこと 託していくこと

(春の運動会)

 

「何か、ほんわかとした、ほのぼのとした、大切な時間が流れていくのを感じました。」(平成26年 校長室便り③「大塚の運動会って、いいですね。」) 2年前に本校に着任して、最初の運動会を終えての感想です。先日、開催された運動会、今年も、やはり同じような感想を持ちました。

 

 教師という仕事は、基本的には1年勝負です。1年間、教えた子どもたちは、基本的には次の年には、別の教師に託していきます(バトンを渡していきます)。そのような、教えるという教師の中核的な仕事の他にも、学校では、教師は様々な仕事を分担しチームで取り組んでいますが、そのような仕事も、やがて、別の教師やチームに引き継いで行きます。

 

 この4月、5月、昨年度とは違ったメンバーで、違ったチームで、そして、昨年度とはまた少し進化した考え方や方法で、附属大塚の教育がスタートしました。ですから、新年度が始まって間もない5月の運動会は、また少し進化した附属大塚の姿が垣間見えてくるのです。

 

 本校の子どもたちへ

 今年の運動会も、とても楽しかったですね。紅白リレーでは、ゆっくり走った子、とても速く走った子、緊張して立ち止まってしまった子、途中で疲れて歩いてしまった子、友達と一緒に楽しく走った子、すぐそばで応援してくれた先生と一緒に走った子、・・・。でも、皆、バトンをしっかり持って走って、次の友達にバトンを渡すことができました。そして、どんな走り方をした皆さんにも、同じように、観客席から大きな応援の声が青空に響いていましたよ。良かったですね。

校長 柘植雅義

校長室便り3

知的障害のある人が大学で働くということ

 

 中学部生徒17名が、新入生歓迎遠足として、筑波大学(東京キャンパス)を訪問しました。雨ということで、近くの植物公園へ行くのを変更して。訪問の目的は、筑波大学で勉強すること(新入生歓迎会)、そして、筑波大学で働く人々の様子を知ること。

 

 プログラムの中に、「校長先生が働いている部屋も見学する」、ということも入っていて、私の研究室にも皆が来てくれました。狭い部屋に皆が順番に入ってくると、(生徒も教員も)山積された本のみならず、“おもちゃ”(ミニカー)のインテリアにも興味津々。

 

 一通りのプログラムを終えて昼過ぎ、附属大塚に帰って行きました。バスに乗って帰る学年、傘をさして歩いて帰る学年と様々。彼らの後姿を見ながら、そんなに遠くない将来、彼らが大学で働くということが当たり前の社会になっているといいなあと、ふと思いました。

 

 どこの大学にも、教授らや、事務職員、その他の様々な人々が働き、学生らが学んでいます。教室もあれば、事務室もある、レストランもあれば、図書館も、グラウンドも、トイレも、ラウンジも・・・働く場所はいろいろありそう。実は、知的障害のある人が大学で働く、というチャレンジが、熊本大学など既にいくつかの大学で始まっています(干川隆 (2016) 知的障害のある人が大学で働くことへのチャレンジ.教育と医学, 754, 31-37.慶應義塾大学出版会.)。

校長 柘植雅義

校長室便り2

価値と桐親会と銀座

 

 東京・銀座のほぼ真ん中、ビルの1階フロアーで、附属大塚の親の会が母体となって設立された桐親会のバザーが始まりました。毎年3月か4月にこの場所で開催します。附属大塚を卒業した知的障害のある成人が、毎日、“工房わかぎり”で一生懸命に仕事をして作り上げた小物が展示販売されるのです。開店の11時には、既にお客様で混雑。

 それらの小物は、知的障害のある方と、美術や工芸の専門家の方々、そして工房わかぎりの職員の方々とのコラボです。多様な才能のある人々が協働して作り上げる作品。障害があるとかないとかではなく、全ての人に様々なかけがえのない価値があり、そのような多様な価値が上手い具合に織りあって、さらに価値付けされた作品へと止揚(Aufheben)していくかのよう。

 

 先日、研究室の博士課程の学生が持って来てくれた「障害を価値に変える」というタイトルの新聞記事をふと思い出しました。20代で起業した社長は、一見マイナスに見える障害(バリア)を、社会の価値(バリュー)に変えていこうとする企業理念を掲げているという。

そして、今から60年ほど前、障害者差別が厳しかった頃、附属大塚の初代校長の西谷三四朗教授(当時、精神薄弱医学の第一人者)が、本校の設立当初の頃の研究紀要に「価値付け」という言葉を寄稿されていることも思い出しました。

 そしてまた、昨年、高校生向けのゼミで、「障害者と価値」についてディスカッションしたことも思い出しました。(平成27年度 校長室便り11「附属駒場の高校2年生にゼミ「障害科学・共に生きる」をしてきました」)

 

 そうこう思い耽っているうちに、皆で会場の外に出ると、晴天のお昼時の銀座。高齢者や大人や幼子、様々な国の人々、そして、働いている人・買い物客・観光客と賑やかに。そのような様々な人々の価値が、それぞれ尊重され活かされる社会を確かに実現していくこと(共生社会の実現)は、もはやそれほど難しいことではないような気がしてきた。

校長 柘植雅義

校長室便り1

ダイヤモンド

 

 4月1日(金)の朝、辞令交付式。今年の春も、全国からたくさんのダイヤモンドが附属大塚に着任しました。新年度のスタートです。

 

 「皆さんは、ダイヤモンドです!」 これは、私が2年前の4月に附属大塚に着任してから、繰り返し職員会議で教職員に話してきていることの一つです。「しっかり磨いて、もっと輝こう。そして、一層魅力的な附属大塚に。」

 

 それでは、本校の子どもたちは? そう、本校の子どもたちは皆アトム(昨年2015年の校長室便り20「鉄腕アトム」)。「アトムは「科学の子」、とても強く、元気いっぱい。そして、「心やさしい」、「心ただしい」、「心はずむ」。そして、ずっと昔から皆の憧れ。」

 

 「附属大塚は、世界最高水準の知的障害教育を目指すことにしました。」(昨年2015年の校長室便り1「世界最高水準」)。さあ、たくさんのアトムとダイヤモンドたち、そんな大きな夢に向かって、まっすぐ、まっすぐ。

校長 柘植雅義

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